第12話 北の巨星

 北方の蛮族は、この数年で蛮族ではなくなった。


 小競り合いのたびに王軍の鎧を集め、侵しては墓を暴き、鉄を錬成し戦に使うようになった。鉄の大きな矢じりは、王軍の鎧を貫くことを可能とし、騎上から弓を射かける古来からの騎馬民族の戦法が復活した。


 王は無能ではなく、関と砦で北方の要地を奪わせることなく守勢を崩さなかった。


 だが、王の死によりこの均衡は崩れ去る。嘉皇后が北の蛮族の領主、冒輝ぼくきを王都へ招き入れたのだ。

 王軍は各地方から集められた連合軍であった。王亡き今、我が領土が第一と散り散りとなっては、各個に北の冒輝に飲まれていった。

 巨大な星となって輝き中原を侵し奪う勢いのままに冒輝は西方へ流れ込んだ。

 その数は膨らむに膨らみ二万から三万とも言う軍勢となった。

 冒輝にとって南方は大河に守られ西方の軍は騎馬が有利な平野が広がることから、一突きに制圧できると考えていた。

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