第9話 錦を飾る

 時は王の崩御の数年前。


 項覇は二千の手勢で故郷へ帰る。


 劉堅と同じく淡い青の衣をまとい、故郷の顔なじみに南蛮の土産を振舞い、街は大きく活気づいた。


 項覇が海賊討伐の命を受たことを宣言すると、期待と安堵の眼差しを集めた。

 

 項覇が不在となるとなると同時に海賊が跋扈したこともあり、商人たちは大いに項覇を歓待し、船、武器、兵糧の支援を申し出た。


 張粛はこれらの盛大な祭りの人物金を回しに回して、得を生んでは、味方を増やした。

 祭りの前にある者が、

「項覇は狐の肉が好きと聞きます。狐を100匹狩りましょうか?」

 張粛が応えて曰くいわく

「狩りなしで狐の肉は不味いだけだお。早馬の数を揃え、狩場にエサを撒け、狩り場を誂え歓待するのが大事だお」


 項覇は正義の人を自称し、武を誇った。ならば悪に対すれば「滅」以外の選択肢を持たぬ漢であった。


 項覇は海賊たちと戦った。もともと項覇はこの大河の出身であり舟の扱いは達者であった。

 また手勢に加わった南蛮の者たちは大河の前に無力であったが、山を進めば道なき道に道を造る。

 難攻不落の水の砦に対して、山岳崖を切り開き背後から突き崩した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る