第6話 三つの天
王は死ぬ。
南蛮平定後の幾年のちに劉堅の叔父が、北の蛮族との戦いの最中に病死する。
王を天とするならば、三人の王子が天を握ることとなった。
正室の母、嘉皇后が天を割った。かの者は何としてでも次代の王を欲していた。
嘉皇后は日頃より、我が娘によって王たる劉の字を与えられた身だというのに、正室と側室が同時期に懐妊し早く生まれた方が次王になるという状況にいらだっていた。
この国では年長者が後を継ぐのが習わしなのだが、劉の血に誇りを持つ嘉皇后は納得しなかった。
側室の陣痛の報が入り幼長の別は決したかに思われたが、嘉皇后は娘の腹を裂き、王子を誰よりも早く誕生させた。
帝王切開ではなく、ただ劉の血の王を欲して、娘の腹を裂き殺したのである。
嘉皇后は娘の命と引き換えに、一位の継承権を持つ王子を手中におさめることに成功する。
その後、嘉皇后は機会を捉えては、側室の子を亡き者にしようとしたが、王により阻まれた。
側室と王子は故郷の西へと逃げる様に去った。
王と嘉皇后の確執は、日々深くなり、宮中を二分する。
王は北伐を口実に軍権を握り、文官達は次王の恩寵を受けようと、嘉皇后に従属した。
嘉皇后は文武の武を得るために、北の蛮族を引き入れた。軍権が王配下の将軍が引継ぎ軍閥化するのを恐れてのこととはいえ、文化が違う者の侵略は容赦なく領地を侵す。
まさに外患誘致だが、王の死の前から、嘉皇后は北の蛮族と通じでおり、思わぬ王の病死により期が早まったのである。
なお、第一王位継承者、劉惇は嘉皇后に大切に箱に入れられて育ち、才覚を示す機会は与えられなかった。
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