第4話 山を越える

 項覇は劉堅に従い山を越え蛮族の平定に赴いた。

 

 山越えに際し、大河を飲み続ける海、雲を衝き超える山を見た。

 心は晴れ力がみなぎった。


 項覇は力を以て争いを止める、「武」の精神こそが正義と信じ疑うことがない漢であった。


 項覇が南蛮討伐に赴く頃は、劉堅自身が軍を率いては連戦連勝した後であり、大勢は決していた。しかし、劉堅が利害をもってことわりを説いて盟約を結ぼうとするも暗礁に乗り上げていた。


 今、項覇には手勢の千に劉堅から預かった二百の兵を加え南蛮の集落を各個に滅する力は十分にあった。

 だが、項覇は南蛮の言葉を一つも知らぬままに、南蛮の長たちの元へ身一つで飛び込んだ。


 ある時は、相撲をとり酒を飲み比べ、ありとあらゆるものを競い合った。

 

 過去の南蛮との争いは、互いの大義名分を好き勝手に名乗り合っては、命を落としわずかな利益をどちらかが得るものであった。


 そんな中の項覇の突拍子もない行動は信を得た。

 南蛮の長たちと仁と情で絆を結ぶことに成功する。

 そのころには、劉堅の二百の兵も項覇の虜となっていた。

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