第5話 呪われし世界

☆(一ノ瀬ヤマキ)サイド☆


何というか成り行きで佐奈子が俺達文芸部の仲間になった。

何故かって?

そうだな。

何が知らないけど「絶対に仲間に入れて」と懇願された。

何故か分からない。


「何でお前さん入部したいんだ?佐奈子。まだ良い部活あるだろうに。こんな部活に入らなくても運動能力も高いんだからよ」

「私はこの場所が良いの。だってイッチーも居るしね」

「まるで俺の事が気になる様な発言だな。何でだよ」

「内緒だよ。イッチー。あはは」


(何でか分からんもんだな)と考えながら俺は佐奈子を見る。

佐奈子は俺に笑みをニコニコ浮かべながら周りを見渡す。

玲奈を見た。

それから「玲奈さん」と声を掛ける。

玲奈は無言だった。

数秒経ってから返事をする玲奈。


「.....何」


という感じで見つめられて根負けした様に。

佐奈子は「何を読んでいるの?」と聞く。

すると玲奈は「それを貴方に話す必要性が見当たらない」と回答した。

それから「親睦は要らない」と応える。

まさに玲奈らしい回答だった。


「う、うーむ」


悩む佐奈子。

それから考え込む。

俺はその姿を見ながら苦笑いを浮かべる。

そして見ていると「あーはっはっは!」と高笑いが聞こえた。

見ると埃まみれの遥が此方にやって来ていた。


「そんな事言わんで親睦心を深めや!アッハッハ!」

「.....遙。うるさい」

「まあまあ!そんな事言わんさかいな!アッハッハ」


「因みに私は仲良くしてーや?」と言う遥。

そんな姿に俺は笑みを浮かべながら遙を見る。遥は佐奈子と握手を硬く交わす。

それから「ほい!先ずは親睦のバグやさかい!」とハグをする。


「あ、あはは.....」


これはこれでドン引きの様だ。

俺は佐奈子のそんな姿を見ながら苦笑をまたする。

それから最後にギャルが言葉を発した。

ギャルってか部長だが。


「因みに親睦は玲奈もそれなりにはしたい筈だ!ツンデレだな!アッハッハ!」

「.....部長。そんな訳無い」

「まあまあ。取り敢えず仲良くしたまえ!せっかくの部員同士なんだからな!」


そう話しながら部長は笑顔になる。

それから周りを見渡した。

そして「5人でうまくやろうな!」とニコッとした。

そうしてから手を無理やり繋ぎ合わせる。

最後に「ふぁいとー!」と部長は大声を発する。


「部長。やかましい。あと嫌な事しないで」

「ですよ。部長」

「まあまあ。そう言うな。せっかくなんだからな。楽しい事をしよう」


俺達は盛大に溜息を吐きながらその言葉を静かに受けながら見ていた。

そして部長は「時に。佐奈子御仁は好きな本はあるかね?」と聞く。

佐奈子は悩みながら「うーん。私は芥川の蜘蛛の糸が好きです」と応える。

(何故それなのか?)と思ったが答えはすぐ分かった。


「最終的に罪人を叩き落としますから」


と笑顔で言葉を発した。

ちょっと違うがな。

俺はその言葉に顔を引き攣らせる。


それから俺は「お、おう」と少し引いた部長を見る。

部長は「な、成程。良いんじゃないか?」と言葉を発する。

「はい♪」と返事する佐奈子。

そして「私は罪人は許しませんので♡」と言葉を発する。


「時に恨んでる人でも居るのかね?」

「居ますね。いーっぱい♡」

「お、おう」


部長も俺もドン引き。

だがその中で「誰を憎んでいるのか?」と考えてしまった。

それから佐奈子に聞いてみる。

「誰か恨んでる奴でも居るのか?」という感じで、だ。

すると佐奈子は「内緒だよ。イッチー。話しても分からないから」と答えた。


「ふむ。闇は深いね」

「闇ですね.....」

「アイドルは闇が深いんだZO♡」


満面の笑顔で反応する佐奈子。

俺はまた顔を引き攣らせた。

それから「お前がそんなに妬みを持つ奴だ。相当なもんだな」と肩を竦めた。

すると佐奈子は真顔になる。


「だね」


とだけ答えてから眉を顰める。

俺はその顔に「?」と思いながら見た。

すると「はいはーい」と部長が手を叩く。

それから「まあ色々なものが人生。だから深くは聞かずにやりましょう」と笑顔になる。


「まあみんな傷だらけだしね」

「.....」

「.....?」


クエスチョンマークを頭に浮かべる様にしながらみんなを見る佐奈子。

俺は目線をずらしながら(まあそうだな。確かにな)と思う。

そして俺は3人を見てから佐奈子を再び見た。

絆創膏では防げない傷だらけ.....か。

そう思いながら。


「何かあったのかな」


そんな事を呟きながら考える。

それから複雑な顔をした。

俺はその姿を見ながら顎に手を添えた。

そして俺は「佐奈子。あまり気にすんな」とだけ告げる。

そして見てくる佐奈子に苦笑する。

すると遙が「せやな」と反応をする。


「悩んでも解決せんしな!」

「そうだね。悩んでも仕方がない問題だ」

「.....」


それから俺達を見てくる。

佐奈子は「ですか」と歯切れの悪い返事をした。

納得はしてない様だが仕方がない。

そんなもんだろうしな.....。

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