第8話 登校前はドタバタして

 窓辺に雀の鳴き声が聞こえてくる。目に刺してくる朝日が起床時刻を告げていた。

「ん……んんっ……」

 僕は体を起こし、大きく伸びをした。三秒ほど腰を伸ばしてから目をパチパチさせると、もう少し眠れよと言わんばかりに欠伸が出てくる。

「ふぁーっぁ……」

 出てきた涙を手で擦り、肌に染みこませた。

 やはりいつも寝ていた時間とかなりかけ離れた時刻に寝たため、体が睡眠不足を嘆いている。天使の暗示というものをかけられた気がするが、目覚めが微妙に悪い。

 昨日の夜中のことは何だったのだろうか。

 朝になればあのザラキエルと言った天使の少女はもういなくなっているのだろうか。

 なんてことを思いつつ、ベッドから出ようとすると、微かな寝息が聞こえてくる。

「……え?」

 まさかいる訳が……と思いつつ布団をバッと剥がすと、そこには銀髪の艶やかな髪と人形を思わせるような絶世の顔立ちの少女が「すぅ……すぅ……」と気持ちよさそうに寝ていた。神々しい羽衣が白色のシーツに同化しているように見える。

「んぁ?」

 朝日がザラキエルの目にも刺したようで、目を擦りながらザラキエルは起き上がった。

「あ、おはようございますー」

「お、おはよう……」

 屈託の無い笑みから普通に放たれたおはようの挨拶に、僕は少し戸惑いながら挨拶を返した。

「やっぱ、いるんだね……」

「そりゃあそうだよー。私は君を不幸から守る守護天使な訳ですからねっ!」

 夜中の話は夢では無いらしい。未だに疑ってはいたが、これはもう確信に変えるしか無さそうだ。

「というか、空気で寝るんじゃ無かったの? 空気は羽毛より柔らかいって言ってなかった?」

「そうなんだけど、ベッドで寝るのってわざわざ浮遊術を使わなくても柔らかさに包まれる訳じゃん? えへへ……だから入った。それにベッドで寝るのって人間界に来ない限り出来ないことだからね」

 僕にはザラキエルが遠回しに「ベッドで寝たかった」という言い訳をしているように察した。

「そ・れ・に! 天使の私と添い寝なんて君も大分良い経験出来たんじゃなーい?」

「…………っ!」

 僕は小馬鹿にするようなザラキエルから反射的に壁の方を向いた。

 ザラキエルが言った通り、僕はザラキエルと一晩ベッドで過ごしたことになる。それは所謂ザラキエルが添い寝しているように見える訳だ。

「あーあ。赤くなっちゃって。そんなに私の添い寝がよかったー?」

「そ、そうじゃない……ただ、寝てたらザラキエルの、か、感触なんて気付かないよ……」

「ふーん……それもそっか。じゃあ今日は君の夢の中に入って——」

「それだけはやめて!」

 折角の気が休まる時間にまでザラキエルに干渉されたら僕の精神が持たない。睡眠くらいはゆっくりさせて欲しいものだ。

「むぅ……ここまで拒絶させられたら私もちょっとは悲しむぞー?」

「え……えっと……」

「あははっ、冗談冗談。君ってからかいがいがあるねー」

「…………ほっといて」

 もう朝から疲れてしまった。目の前にどけた布団があるので、それを被って今日はもう休みたい気分である。

 だけど学校だけは休んではいけない。授業についていけなくなり、先生やクラスメイトからの信用を失ってしまうからである。

「とりあえず、朝ご飯食べたいからどいてくれないかな?」

「仕方ないなー」

 ザラキエルがベッドから離れようとしたその時——

「樹生、ご飯……よ……」

「あ——」

 突然開け放たれた扉から母さんが僕とザラキエルを見てフリーズする。

 母さんから見れば僕とザラキエルのような少女が一緒にベッドにいるという光景だろう。二人で一緒に寝たから起きたばかりの光景は色々と誤解を招きそうだ。それにザラキエルの羽衣はそこそこに露出度が高いため、男女の営みに使われる下着のようなものだと思われかねない。

 数秒間フリーズした母さんは——

「あなた! 樹生が! 知らない女の子と一緒に! ベッドに! 入ってた! 聞いて!」

 ドタドタドタドタ!

 ——と超大慌てに階下にいる父さんに今の状況を伝えようとしていた。

 こ、これはマズい!

 ……というか——

「ザラキエル! 母さんや父さんの記憶改竄は!? あの様子だとやってないように見えるよ!?」

 夜中の話にあった母さんや父さんの記憶改竄がされてない。僕が寝ている間に記憶改竄は済ませておく算段だったはずだ。

 当のザラキエル本人はというと——

「ご、ごめんね! うっかりすっかり忘れてた! いい急いでやってきますぅー」

 と母さん以上に大慌てしていた。純白の翼と光輪を出して、わたわたとしながら僕の部屋から出て行った。

 これはザラキエルが戻ってくるまで僕は動かない方がいいだろう。今の内に今日の時間割の教科書類でも鞄に入れておこうと思って準備をする。

 そして一分か二分経過。

 ギィイと部屋の扉が開いて、息絶え絶えのザラキエルが顔を覗かせた。

「で、出来たよ……これで、大丈夫な……はず……」

「お、お疲れ様……」

 労いの言葉をかけると、ザラキエルから出ていた翼と光輪が、パァと消えていく。

 他人の脳に干渉するだけであんなに疲れるものなのだろうか。今度時間があったら聞いて見ようと思った。

 ザラキエルが母さんと父さんの記憶改竄をしたので、さっきの誤解は解けただろう。完全に安心した訳では無いが、一応用心はしておこう。

 台所では母さんが朝食を作った後片付けを、父さんは新聞を読みつつコーヒーを飲んでいた。

「お、おはよう……」

 僕は恐る恐る母さんと父さんに挨拶をした。チラッと隣のザラキエルを見るが、妙に表情が強ばって見える。

 母さんや父さんの反応はと言うと——

「おはよう樹生」

「おはようさん」

 と二人とも何事も無かったかのように普通に返してきた。

 そして隣にいるザラキエルを見ると——

「あら! エルちゃんじゃない。いつの間に来てたの?」

「おお、エルちゃんか。久しぶりだな。アイツらは元気か?」

 とどこかで知り合ったかのような反応をし、ザラキエルの存在自体を不思議に思っていなかった。

 一方、ザラキエルの方は——

「はい、お久しぶりです。昨日の夜に来ました。あの人たちもちゃんと元気にやってますよ」

 と母さんや父さんの質問に普通に返していた。

 どうやら記憶改竄は出来ているらしい。これで母さんや父さんに対するザラキエルの説明はしなくて良さそうだ。

 今の会話を聞いている限り、昨日の夜中話し合った内容『ザラキエルは海外の友人の子』という設定をほぼそのまま使っているようだ。母さん、父さんからは『エルちゃん』という呼び方で呼ばれているらしい。

 僕は自分の席に着いて、用意されているベーコン目玉焼きトーストを食べ始めた。

 流石にザラキエルの分は用意されていなく、母さんは「ごめんね、今これくらいしか無いの」と言ってグラノーラが入った袋と器、スプーンと牛乳をザラキエルに渡した。ザラキエルは「お気になさらず」と言ってそれらを受け取り、食べ始めた。

 天界にはグラノーラやスプーン、牛乳といった人間界のものは無く、疎いとばかり思っていたが案外そうでも無かった。ザラキエルは普通にグラノーラを器に出し、牛乳をかけて食べていた。「ルールは破るためにある」というような間違った知識が入り込まれているので、少し心配していたが、どうやらそれは僕の杞憂だったらしい。

「ねぇエルちゃん。さっき樹生のベッドに入ってなかった?」

「——ぶふぉっ!?」

 母さんの唐突な質問内容に僕は面食らって、飲んでいたポタージュを噎せてしまった。

「どうした樹生、大丈夫か?」

 父さんが新聞の陰から顔を覗かせる。

「あ、うん……ゴホッ……だ、大丈夫」

 ザラキエルの方も表情が固まっており「え……あ……あ、えっと……」と素直に受け答えが出来ない状況に陥っている。

「た、多分寝ぼけてたんじゃない? だってほら、夜に来たって言ってたし」

「そ、そうです。ちょうどこの家に来た時にはもう疲れ果てていて、色んな判断が覚束なかったので……」

「あらそう……てっきり私は樹生がエルちゃんを誘ったとばかり……」

「そんなことしないよ僕は」

 母さんは「そうねぇ。樹生がそんなことするはず無いもんね」と呟いて、止まっていた朝ご飯の洗い物を再開し始めた。

 取りあえずこれで朝の誤解は解けただろう。一先ずは安心である。

「エルちゃんはいつまで日本に留学するんだ?」

 父さんが新聞を置いて、ザラキエルと向き合った。

 ここで僕が変なことを言うと記憶改竄に影響を与えそうなので、あまり喋らないようにする。

「えっと……実はちょっとあまり決まって無くて……暫くいると思います」

「そうか。向こうに帰る時は言ってくれよ」

「はい」

 ザラキエルの留学が終了、それは僕の救世が終わって天界に帰ることを示すはずだ。具体的な年数は言えないだろう。

「あ、そうだエルちゃん。留学中は私の部屋とベッド使ってくれていいわよ。どうせ私、夜はほぼいないしね」

「本当ですか!? ありがとうございます」

 母さんの部屋が一時的なザラキエルの部屋になるのは有難い。僕の部屋にいることになったら僕が困る。年頃の男女が同じ部屋にいるというところも懸念されているだろう。

「あ、でも着替え……どうしようかしら……。エルちゃんみたいな子に合うような服なんか私持ってないし……」

「あ、その辺は大丈夫です。着替えは持ってきましたので」

「あらそう? 良かったわ。もし何か服とか欲しかった遠慮なく言ってね?」

「はい。ありがとうございます」

 ザラキエルが着替えを持ってきている訳が無い。この人は天界からそのまま降りてきたのだ。荷物なんかあるはずがない、と言うのは言わぬが花だ。

 だとしても、ザラキエルの羽衣は外に出ると大分目立つ。露出部分も相まって、警察沙汰になりかねないところはどうにかして欲しい。

「にしてエルちゃんの服……それって海外の流行なの?」

「あ……えっと……」

 ザラキエルの羽衣は天界の標準服か天使の服みたいなところだろうが、流石に言えなさそうだ。

「お、お母さんが買ってくれたんです。そこそこ涼しいので寝間着として使ってて……」

「そうなの? 夏とか涼しそうで良いわねぇ」

「そ、そうですね……」

 ザラキエルの顔が少し引きつっているように見える。ザラキエルにとっても少し苦しい言い訳だったようだ。

 ポタージュを飲み干し、ヨーグルトを食べて母さんに空いた食器を渡す。

「ご馳走様」

「はいはい。あ、エルちゃん。食べ終わったら私のところ持ってきてね。牛乳とか置きっ放しでいいから」

「分かりました」

 僕が台所を出ると同時にザラキエルも食べ終えたらしく、母さんに食器を渡していた。

 洗面所で歯磨きをし、バシャッと冷たい水を何回もかけて顔を洗う。買い置きしていた歯ブラシをザラキエルに渡した。歯ブラシと歯磨き粉の使い方も分かっていたようである。

「人間たちは毎日こうして歯を磨いてるけど、コレって何の意味があるの?」

「清潔に保つため……かな? 歯の病気になりたくないからね」

「ふーん……天界にはこういった週間無いから。体調悪くなったらアスクレピオスの所行って診てもらえば大体治るしねー」

「へ、へぇ……」

 アスクレピオスは神様の名前だろうか。天使の名前ではなさそうである。

 くちゅくちゅとザラキエルは口の中を濯ぎ、歯の白さを鏡で確認していた。

「ふーん。確かに清潔に保つって意味ではいいかも。何かスッキリするし」

 洗面所を後にする前に、救急箱からガーゼと絆創膏、オキシドールを取り出し、昨日怪我した部分を応急処置する。応急処置が済むと、救急箱に出したものを戻して僕の部屋へと一旦戻る。

 制服に着替えようとした時、ザラキエルが部屋にいると恥ずかしかったので廊下で待って貰うよう言った。

「ごめん、ちょっと着替えたいから廊下で待っててくれないかな?」

「えー、別にいいじゃん。ただ着替えるだけでしょ?」

「そうなんだけど、その……?」

「あ、分かった。恥ずかしいんでしょー?」

「…………」

 僕は何も言い返せなかった。

「初心だねぇ。てか私、天界からずっと君のこと見てたんだから、君のこと全て知ってるってもんだよ? つまりアレの大きさとかも——」

「——いいから出てって!」

「おぅ——」

 僕は強制的にザラキエルを廊下へ追いやり、バババッと寝間着から制服へと着替える。ブレザーのボタンをしっかりと留めて、ネクタイをきちっと結んで——ものの数十秒で着替えることが出来た。

 いつもゆっくりと着替えていたので、こんなに早く着替えられるものなのだと思った。

「いいよ、入ってきて」

 僕は部屋の扉を開けてザラキエルを呼ぶ。廊下にいたザラキエルは羽衣の姿ではなく、薄い桃色の落ち着いた雰囲気のトップスに、ブラウンのチェックスカート。上からはベージュのロングコートを着ていた。ロングコートを着ていながらもコートから翼が生えており、光輪は特に何も変わらず出ていた。

 艶やかな銀髪とザラキエルの容姿と相まって、非常に良く似合っている。

「あれれー? もしかして私に見とれてるー?」

「あ、いや……その……」

「いいっていいって。見とれてたってのは分かるからー」

 図星を突かれて僕は下を向くしか無かった。

「似合ってたのは事実だけど、この服どうやって着たの? 母さんの服にそんなもの見たこと無いし……」

「ああ、コレ? 一応人間の女性の間で流行ってそうな服を適当に見繕って着てみただけ」

「そうかもだけど、どこにこの服が……?」

「そういうこと? んー……口で説明するより見てみた方がいいでしょ。君の母親に見られると面倒だから部屋に入るよ」

「あ、うん……」

 ザラキエルは僕の部屋に入り、扉を閉める。

 部屋に入るや否や、両手を広げて案山子っぽく立つと、目を瞑って何かを念じ始めた。

「んんんー……」

 するとザラキエルの着ていた服が白い光に包まれ始めた。小さい女の子向けアニメの変身シーンの一部を見ているような感じがして、僕は少しだけ目を反らす。

 白い光は三秒ほどで徐々に薄くなり、完全に光が消えるとそこには羽衣姿のザラキエルがいた。

「えっと……つまり、服はそうやって着たってこと?」

「簡単に言えばそう。私の頭の中で念じた服装をコピー、トレースするような感じで再現したって訳」

 もう一度念じて白い光に包まれると、さっき見た春コーデっぽい服装になる。

「こんな感じで私に人間界の服は必要無いの。だけどこの服の再現にはちょっとだけ面倒なことが一個だけあってねー」

「面倒なこと?」

「うん。例えばこうやって私がこのコートを脱いだとするよ? そして床に置く。するとどうなると思う?」

 ザラキエルはベージュのロングコートを脱いで、片手で無造作に持った。

 ロングコートから生えていた翼はいつの間にか消えており、その代わり中に来ていた桃色のトップスから翼が生えていた。どうやらこの翼は衣類を貫通している訳では無いらしい。

「え……分からないよ」

「でしょうね。これも実際に見てみた方がいいかも」

 ザラキエルはベージュのロングコートを床に置いて離す。

 するとベージュのロングコートは一瞬の内に光の粒子となって消えてしまった。

 繊維一本も無く跡形も無く。

「ど、どういうこと?」

「この服の再現には私の天使としての力を使ってるの。つまり私の天使の力が働かない場所、私の影響外のところへと離れたら消えちゃうんだ。人間界の服には洗濯っていうことをするんだったよね?」

「一応毎日……」

「ってことはだよ? 私が服を着ていてもこうしたら勝手に消えちゃう。要は洗濯しなくてもいいんだけど、私の服が無いってだけで怪しまれない?」

「あ! なるほど」

 そうか。この家に住むことになったとはいえ、洗濯機の中はザラキエルの力は及ばない。母さんが毎日の洗濯でザラキエルの服だけ洗ってないことに気付くと、それだけで不審がられる可能性が高い。

「あとねぇ……」

 と何やら意地悪をするような口ぶりで言うと、徐ろにブラウンのチェックスカートを脱ぎだした。

「ち、ちょっと!」

「何?」

「何じゃないよ!? 何で脱いでるの!?」

 水色の下着に目を引かれてしまったが、すぐに目を反らし、閉じてて見ないようにする。あの水色の下着もザラキエルの力で再現したものなのだろうか……じゃなくて!

「いいでしょ。別に減るもんじゃ無いんだし」

「もうちょっと恥じらいってものを持ってよ!」

「天界にそういったものはありませんよっと、はい」

「ええ……。って、え?」

 と僕の手に何かを渡された。目を開けてみると手渡されたのはさっきザラキエルが脱いでいたブラウンのチェックスカートだった。

 綿百パーセントの生地で出来ているくらいに柔らかい。

 ……あれ?

「何で消えていないの?」

 僕に渡した時点でスカートはザラキエルの力の影響外にあるはずだ。さっきの通りなら消えるはずなのに、何故かこのスカートは消えていない。

「私の影響するところって、私と私が干渉している人に効果があるみたいなの。だから君にスカートを持たせても消えない。多分だけど君の母親に渡しても消えないよ。会話してる時点で干渉してるからね」

「そういうものなの……?」

「そう。ま、私も天界と人間界の勝手にはあまり詳しくないから、線引き、境界線がどの辺なのかはさっぱり。この辺は君を救世しながら勉強していくしかないってこと」

 僕が説明を理解している最中、ザラキエルは僕の手に渡していたスカートを奪い取り、慣れない手つきでスカートを着ていた。消滅したロングコートもいつの間にか再現させて羽織っている。

「こんな感じで私が君の家で厄介になるってことは、ちょっとだけ何かしら揃えないといけなさそうなの。学校終わったらちょっとだけ付き合って貰うよ。拒否権は無いから!」

「……分かったよ」

「大丈夫だって。不幸なことが起きても私がどうにかするからさ」

 これはもう素直に従うしか無い。ザラキエルと出かけている最中に不幸な出来事が起こったとしても、それはザラキエルが対処してくれる。そう思うと少しだけ気は楽である。

「いっつきー、いるー?」

「晴榎?」

 外から晴榎の声が聞こえてくる。

 そういえば今日の朝は晴榎と一緒に登校する約束だった。

 時間を見ると七時四十分近く。普段ならとっくに家を出ている頃合いだ。

「ザラキエル、僕はもう学校に行くから。不幸な出来事の件は頼むよ」

「任せておいて」

 親指を立てて合点! と言いたげにザラキエルは僕を見送ってくれた。

「さて、それじゃあお仕事といきますか」

 ザラキエルは窓越しから樹生と晴榎が合流し、一緒に学校方面へ向かっていったことを確認すると、窓を開け、翼を広げて外へ飛び出した。

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