第7話 新しいタイプの社員 会社あるある問題

ある部署から、うちの部署に左遷された社員がいた。


名前は、「高谷 光」


髪はショートカットの26歳、眼鏡を掛け、鋭い目をしている。


そして、どす黒い怨念のオーラを感じるのは気のせいだろうか?


名は光だが・・・光どころか闇を感じる。


人事部の評価では、OJTが上手くいかない、融通が利かず上司とコミュニケーションが取れないとの事だ。


実際の業務において、実務経験豊かな上司や先輩が、若手や後輩に知識やスキルを計画的に教えるのが「OJT」なのだが、まぁ実際は・・・計画も無ければマニュアルも無い、実践を通して補うトレーニングを「アットホームな現場」と濁している職場は結構ある。


「どこがアットホームなのよ!別にそんなの求めてないから・・・」と、思った事が多々あったな・・・この会社でも。


しかも、この会社の上司っと言ってもなぁ・・・下からの評判が悪く、仕事が出来ない方も居るから何とも言えん。


横領やコンプライアンス違反だけでなく、ハラスメントを自慢する奴も居たぐらいだから、人事部の評価も、あまり参考にならないんだよ。


結局、問題がある上司が主任に落とされ流れ着く所がこの部署で、この部署に左遷になった元上司だが、半年の間に5人全て辞めて行った。


新卒モンスター社員についても、余りにも酷く、本当にやらせる仕事が無くなりクビになるか、重大な法令違反などので懲戒処分を受けてクビになるかのどちらかである。


意外と大変なのよ・・・追い出し部屋と言っても、一癖も二癖も癖のある人が放り込まれるので、仕事の調整が辛い。


コンプライアンスを他の部署よりも守らないと、すぐ訴訟が起きたり、労基がすっ飛んでくる訳で、かなり神経使う割には、周りからの評価がかなり悪い。


ガチでブラックな環境だと思うよ…給料良いから我慢出来るけど。


この半年間、10人ぐらい左遷されてきたが、残ったのは、自分と咲さんだけ・・・


そろそろ限界、まともな社員が欲しい…。



とりあえず、自己紹介も終わったし、ここに流れ着いた経緯を知りたい。


人事部の説明だけでは本当の状況がわからん。


「高谷さん・・・あまり聞きたくないけど、前の部署で揉めた理由を教えてくれるかな?知らずに同様な事で揉めると困るから。」


「…それ、業務命令ですか?」


「周りの話だけでは判断出来ないので、出来るなら教えて頂けたら有り難い。」


「業務命令でなければ、話すことはありませんので…あと、意味不明や曖昧な説明は、業務に支障が出ますので止めて下さい。」


うちの部署に流れ着いた社員の中ではニュータイプになるな…相当すれた感じの目をしている。


まぁ、「根性論」を言ってくる奴ほどコンプライアンスを守らない場合が多いからな。


今まで左遷されてきた社員と比べると、メリハリがあり過ぎてドライだが、奴らよりはマシだと思う。


確か…この様な物事の白黒をはっきりさせ、無駄なく物事を進めようとするのは、FFS理論の「弁別性」タイプとか言っていたな。


「あと、『会社で働くのは、世の中に貢献するためだ!だから精一杯働け!』なんて宗教じみた説教は論外です、仕事は金儲けの為、ボランティアではないので、その様な事を強要するのも止めて下さい。」


まさに、竹を割った様な性格だな…いい意味でも悪い意味でも。


たが、言っていることは間違いではない…。


しかし、コミニケーションを取る為、多少は献身的な事も必要と思われるので、正しいとも言えないが…。


価値観と言う物差しで見方を変えると必要になる事もある。


改めて思う、『人間って、つくづく面倒臭い生き物たな』と…。


とりあえず、法律を守り、余計な仕事をせず、言われた事はキッチリやれれば良い訳だが…今までそれが出来ない奴ばかり来たので、前よりマシな奴が来たと喜ぶべきか?


しかし、今回も強烈な奴が来たな…贅沢は言わんが普通の奴が欲しい。


そう言えば、昔勤めていた会社で報告書を書いた時「『普通』と言う基準も曖昧な物だから数値や基準など具体的に分かる様にしろ!あと、感情論は要らん!」と良く上司に怒られたな…。


あの上司は良かった。


無駄な仕事が多く非効率な為、労働環境を改善しようとよく社長と喧嘩してたな…最終的に辞めてったけど。


あの上司がいなくなってから会社が傾き始めたんだよなぁ…潰れる前に俺も辞めたけど。


今は元気なのかねぇ…あの上司は。

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