第6話 息子のハロウィンは…ヤバイ。

久しぶりの休日、息子が自宅で絵を描いていた。


妻の話では、ハロウィンに関する物であれば何でも良いと言うが、中々範囲が広い宿題だ。


悪く言えば、ハロウィンに関係している作品なら、何でも有りと言う訳で、ハロウィン期間限定のお菓子でも、ガチャガチャのスケルトンでも良いのだ。


そして、息子は絵を描く事を選び、B4の白い紙の真ん中に、5㎝の青い雲を描いているが…。


「ずいぶん変わった雲だな…雲の上に…月が乗っているのか?」


と言ったら、否定された。


「違うよ!コウモリだよ!コウモリの上にカボチャだよ!」


ずいぶん、変わったコウモリだ…さすが小学1年生、斬新な絵を描くものだ、と思っていた。


月と思っていたやつは、カボチャだったのか…丸かったので解らなかった。


今度は、カボチャの上に花を描いた…花に顔を描いている…。


素晴らしいぐらいの笑顔の花が描き上がった…。


が、この時点で絵が狂気に満ちた絵になるとは、想像できなかった。


「はんこ持ってくる!」


…はんこ?


スタンプだよな…と思っていたら、やっぱりスタンプだったが、取り出したのはハートのスタンプ。


どこに、ハートを使うと思って見ていたら、コウモリの羽の真ん中に左右対照で、ポンポンと2ヶ所押した。


…まぁ、中々斬新かな、多分。


そして息子は、ハートのスタンプを箱に戻して、次に取り出したのは、高田のシャチハタ!


「待て!それは駄目だ!押すな!押すんじゃない!」


「何で?」


「高田のはんこを、そんな所に使ったら駄目だろ!」


「えー!何で?」


「名前が入っているはんこは禁止!」


「なら、名前が入っていないはんこならいいの?」


「まぁ、名前が入っていないなら…。」


そう言うと、息子が次に取り出したのは、ドクロマークのスタンプ…。


おい、そのスタンプがあると言うことは…毒劇の管理者をやっていた時に使っていたスタンプを全部持ってきたのか?


…もう、イヤな予感しかしない。


そして、ドクロのスタンプを押しまくった!


しかも、上下逆さまで…。


「なぁ、上下逆さまだけど…いいのか?」


「うん!」


どうやら、手違いでないようだが…ほとんどインクが残ってないせいか、半分ぐらいはかすれている。


そして、次に取り出したのは、毒物のはんこ…。


それを、全体的にランダムな向きで押しまくる!


さらに、毒物のはんこの次に出てきたのは劇物のはんこ...。


「そのはんこの意味、解っている?」


「う~ん、解んない!」


…そうだよな、解んないよな。


無知って恐いねぇ…止めた方が良いのか?


そのはんこも、毒物同様に押しまくる…。


…シュールだ、イヤ、カオスだ!これはヤバイ。


笑顔の花がさらに狂気を増幅させている。


無邪気な笑顔が、こんなに恐いとは思わなかった!


…俺は、この絵を世に出して良いものかと、本気で悩んだ。


が、描き上がったと思っていたが、息子の手に新たなスタンプ…御霊前!


「これで周りにポンポンと押して出来上がりだよ!」


「…そうか、良かったな。」


「うん!」


…もういい、考えるの止めよう、その方が平和だと思う。


と、思っていたら、妻が帰ってきた。


「お母さ~ん!描けた!」


と、玄関で出来た絵を見せる息子…。


引きつった笑顔…そして、俺の方を向く妻。


口元は笑っても、目が笑ってないですね…。


間違いない、あれはヤバイ時の目だ!


「あなた、ちょっと話があるのだけど…」


あぁ、胃がキリキリする…。


息子の絵のおかげで、ハロウィンが来る前に、ホラーな体験出来そうだ…。

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