第5話 休みと言う物を破壊する爆弾!

最近、よく悩む…。


雑務課部長、兼生産部部長補佐…なんて、中途半端な立ち位置なのだろうか…。


部長がいないのに部長補佐、何故代理ではなく補佐なのか、社長の考えている事がよく解らん。


それに、自分以上に周りが困惑している。


非常にやりづらい、微妙な空気が周りから流れ来る。


どうにか…ならんか?…ならんな!


考えるのは止めよう、頭がハゲる。




それより今は、今日の百貨店の特売の方が重要だ!


特売の食材を逃すと妻に怒られる…確か、午後3時からのタイムセールだったか。


えーと、10円ピーマン5個、100円玉子1ケース、グラム100円の大和イモ200gを2個...


後は、グラム38円の鳥モモ肉2パック、78円のナプキン2箱…。


ん?…ナプキン?


…目の錯覚か?


…やっぱり、ナプキンと書いている。


まさか、生理用のナプキンじゃないだろな…。


いくらなんでも、休日の旦那に、生理用ナプキン買ってこい…?


それはないだろう!


まぁ、無いと思うが、一応妻に確認取るか…。



それから3分後…俺は、落ち込んでいた。



本当に、生理用のナプキンを買うのか…何の罰ゲームだよ!


普通、旦那に買わせないだろ!


…待て!下手な行動を取ると、社員の誰かに見つかった時がヤバい!


時間はまだ有る…慌てるな、俺!


先ずは、ルートの確認だ…野菜コーナーから玉子コーナーへ。


なんか、大事な事を忘れているような…。


…それから、精肉コーナーから生活用品のナプキンの所まで確認。


後は、レジで会計…って、レジスタッフが全員女性じゃねーか!



(どうする…)ポンポン!、(マイッタなぁ…)ポンポン!


誰だ?肩を叩く奴は…。


振り返ると、そこに居るのはセイジロウ!


…なんてツイてないんだ。


「よう!キヨシ、元気?」


…お前の顔を見て、さらに元気無くなったよ!


「実はさぁ、俺の弟子も来てるのよ!知っているだろ、お前の勤めている会社のパソコンの管理者…。」


最悪と思っていたら、さらに斜め上に行きやがった!


…もうダメだ、完全に、この先のトラブルは予測不能た。


「セイジロウ…何故、お前がここにいる。」


「ずいぶんなご挨拶だなぁ、買い物する為に決まっているだろう!今日、特売だぜ!」


「それで、弟子まで引っ張り出したと…何する気だ。」


「普通に、料理の材料を買いに来ただけだよ!」


「料理?この前、味噌汁の入った鍋を爆発させたじゃねーか!」


「ステンレス鍋で味噌汁の再沸騰、あれ、怖いね、はっはっは…。」


「笑ってんじゃねぇよ!わざとだろ!」


「そんな、小さい事、気にするなよ。」


どこが、小さい事だ!…と、言いたいところだが、今までやってきた事と比べると、本当に小さい。



鍋の爆発など、アイツにしたら小学生のお遊び程度の感覚しかない。



中学生の頃に、セイジロウが利用している倉庫付近に侵入した泥棒がガス爆発で吹っ飛んだ事がある…残念な事に泥棒は逃走出来てしまった。


しかし、そこからが本当の地獄の始まりである。


次の日、逃走した泥棒が唐辛子の粉でで悶絶した後、充満したガスで吹っ飛ぶ場面の動画をネットで公開され・・・世界中で話題になりニュースになる。


しかも、どこかの暇を持て余した富豪が、ゲーム感覚で逃走した泥棒に懸賞金を掛けたのでお祭り騒ぎ!


そう、本当のリアル鬼ごっこの始まりだ…世界中の鬼が泥棒を見つけようと探し始めるのだ。


こうなったら泥棒は逃げ切れる訳がない、身体は爆発で満身創痍、テレビ、ネットで自分の顔がさらされて逃げ道もなく、自首する途中で捕まり、愚かな泥棒として名前をネットに刻む事になった。


恐らく、この泥棒は、今もまともな職場に就職する事は出来ていないだろうな…ネットタトゥーはそう簡単に消えんから。



近所の暴走族の倉庫に、何者かがお手製のスタングレネードを仕掛け爆破…気絶した暴走族を真っ裸にして写真を撮り、町中にばら撒かれた事件もあった…しかも、当時奴は小学生。


これら2件とも、ピンからキリまでセイジロウが絡んでいると俺は思っているが…証拠が無ければ、真実は闇の中である。



そして、奴は中学生の時点で、町中の不良だけでなく、ヤクザすら避けられる様になる、付いたアダ名が『マッドマスター』。



今は、以前のように暴れはしないが、その気になったら、バイオハザードを使って病院送りにしたり、コンピュータウィルスで相手の秘密を世界中に拡散や、死ぬより苦しむ毒を平気で盛りそうだ。


これらをやったと言う証拠は一切無い…が、奴の周りで悪さをした奴らが、愉快に再起不能になっている。


本当に、敵に回した時の質の悪さは筋金入り…しかし、知識や技術は超一流、非常時にお世話になる事が有るので、あまり無下には出来ないのである…非常に面倒臭い奴だ。


おそらく、弟子も相当な思いをしているだろう…イヤイヤ、俺なら無理だね。



「あの…あまり大きな声を出すと、周りの視線が…。」


セイジロウのお弟子さんが、やんわり注意を促す。


「申し訳ない…、そしてセイジロウ!今は、お前に会いたくない、ほっとけ!」


「何だよ!つれねーな!」


「俺は、疲れている、頼むから、な!」


「わかった!後で、お前の家にスタミナ料理の材料、持っていくぜ!楽しみにしろよ!」


「精神的に疲れてるんだよ・・・。」


もう、買い物なんてどうでもいい…。


今の俺は、頭の中でいかに、あの歩く災害からどう逃れるか、その事しか考えられなくなっていた。


あぁ、せっかくの休みなのに…。

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