第3話 トラブルの数はゴキブリの数より多い!

雑務課が生産部の作業を、泊まり込みで手伝い初めて1週間、ようやく事態の収拾が出来てきた。


「一時はどうなるかと思いましたよ。まさか着服や代理店から賄賂まで貰っていたとは...次長もコーヒー飲みます?」


「あっ、すいません、胃がキリキリ痛むのでご遠慮したいかと...。」


「そうですよねぇ、あれだけの事あれば胃にこない方が不思議ですし。」


「高田さん、この度は大変申し訳ありませんでした。まさか、あの人がここまで酷い事をやっていたとは...肝心は事は皆、蚊帳の外でしたので。」


「権力や情報が一点に集中していたのは不味かったですね...、バックアップと監査が、どちらも機能してなっかたのが痛かったですが、だいぶ問題点の洗い出しも終わりましたので、後は対策を検討して実行ですかね...。」


「本当に、申し訳ありません...。」


「まぁ、仕方がないですよ!基本的に上の者に逆らうのはタブーですから...新聞沙汰にならなかっただけでも御の字です。」


「確かに...。」



実は、今回の会議の後に、社長の命令で生産部に緊急監査が入り問題が発覚...生産部の部長が退職...いわゆる、一身上の都合にしているクビと言うヤツである。


部長が去ってから1週間後には、生産部が大混乱を起こして機能が半分まで低下...。


生産部の次長では事態の収拾がきかない為、社長の緊急辞令により、生産部の部長補佐を任命されてしまった。


まさか、部外者に近い俺に部長補佐の役職が回ってくるとは...正直勘弁してほしい。


しかも、現在生産部の部長は空席、次長1人、課長2人...事実上、何故か生産部のトップにさせている訳である。


あぁ、胃がキリキリする。


しかし、胃がキリキリする程度で済んでいる...理由は咲ちゃんがデータチェック10人分の仕事を1人でこなしているからだ。


優秀な部下のお陰で、生産部の中での自分の評価はそんなに悪くない。


本人いわく、得意分野と言うことだが...あんた凄いよ。


逆に、対人関係は苦手と言う事だ。


誰にでも得意不得意は有るもので、完璧な人間は存在しない。




得意とする仕事を与えたり、不得意とされる分野のサポートや仕事の振り分けは基本的に上司の仕事。


ブラック社員を除いて大抵は、上司の腕次第で部下の能力がほぼ決まるものである。


優秀な部下は、部署の宝であるが、能力が生かせない分野に放置したり、その部下の能力を恐れ潰しにかかった事例も沢山ある。


俺は、職場でよくブラック社員から嫌がらせを受けたものだ。


普通の人なら心が折れたり病んだりするが、俺の場合、大量の資格、知識、技術を駆使して、力ずくで黙らしたり、相手が後悔するほどの報復など、若い時はよくやった。


当時の俺に比べたら、今はかなり丸くなったと思うよ。




「しかし、彼女凄いですね...お家に帰らず泊まり込みで1週間、しかも10人分の仕事こなしている。」


「俺もここまで凄いとは思ってなかったですよ...10人を今回のトラブルに当てられたのは非常にデカイ。」


「しかも彼女が頑張っているので、男性社員は立場上、全力で当たるしかないのも大きいですね。」


「やらんよ、俺の部下が1人も居なくなる。」


「いっそうの事、生産部に居座っては?」


「勘弁してほしいわ、トラブルが解決の目処が付いたら戻るよ。そう言う約束だし。」


「残念です。」


「話変わりますけど、今回工場に派遣した5人の内3人は、事務職より工場が合っているような気がしますが、あとで聞いてみたらどうですか?」


「あの3人ですか?」


「聞いた話だと、生産部の元部長が、お前はそれだけヤってればいいんだ!と言って仕事を決めていたようで...。」


「はい、確かにその通りです。」


「なら、生産部の皆さんに職場に関してのアンケートは必要ですね。合間見てやってみましょう。」


「そうですね、分かりました。しかし、要望やトラブルが50個ほど出た来たら、困ってしまうかもしれませんね。」


「逆に無い方が問題ですよ。」




後日、アンケートをした結果、要望が3桁、重大な問題が20個以上も発覚し、さらに他の部署から応援が来て、対策に追われる事になる。


...あぁ、応援に来た方々の恨み節が聴こえる。

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