第6話 陽斗視点

  ※食事中は読まない方が良いです。ばっちい話でございます💦


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 あかねが夕食の食材を買いに行くと言って、外出してからずいぶんと時間が経ったのに、外が暗くなってきたにも拘わらず戻ってくる気配もない。瑠奈は泣き止まないし、美優は壁に落書きを始めた。しかも油性ペンで書いたものだから、どんなにこすっても完璧には落ちない。


(この間張り替えたばかりの壁紙だったのに・・・・・・まずいぞ、母さんのお気に入りの壁紙なのに・・・・・・目の玉が飛び出るほど高かったんだぞ)


「こらっ! 壁に落書きなんかしてはいけないよ。画用紙を用意したから、ここに好きな絵を描きなさい」


「うっ、うわぁーーん! やだやだ。こっちがいいもん」


(なぜ子供は壁に絵を描きたがるのだろう? それに、少しでも思い通りにならないと泣きぐずる。子供は天使なんて嘘だ。うるさくて汚くて大人をいらつかせる天才だよ。少しも寛げやしない)


 帰ってこないあかねに腹を立てながら、美優達の食事を用意した。美優には、炒り卵を作って食べさせる。僕は料理なんてできないし、とりあえず卵を食べさせておけば良いだろう。ついでにソーセージも炒めて皿に盛り付けた。


「おじちゃん、これじゃぁ、あさごはんだもん。こんなのいらないぃーー!」

 美優は食べたい物を次々に要求しながら、炒り卵を手で掴んで僕に投げつけた。バナナやプリンに唐揚げやポテト、今は家に無い物ばかりを食べたがる。思い通りにならないと、火が付いたように泣きわめくのだ。瑠奈のオムツからは排泄物の匂いが漏れている。多分、大のほうをしたのだろう。


 オムツなんて替えたこともないぞ。どうすんだよ、これ?


 いくら、待ってもあかねは帰って来ない。仕方なく僕がおむつを替えてやった。ひろげて見ればやはり大のほうで、さらにブリブリッと勢いよく水っぽい糞を放ったので、僕の顔や服にしっかりと跳ねてしまった。


「うわっ! 汚いなぁーー。最悪だよ」

 慌てて洗面所まで駆けて行く。臭くてたまらないし、シミになったらどうしてくれるんだ? 今着ている服はお気に入りの一枚だし、高かったんだぞ。


 本当は、子供なんて苦手だった。犬や猫でさえ嫌いさ。部屋を汚すしうるさいし、なにより、自分の時間を奪われて余計な金もかかりやがる。だいたい、こんなことはあかねがやるべきことだ。


 くっそ! あかねのやつ、どこに行っちまったんだ?


 着替えて戻ると、美優はジュースの中に塩やら砂糖を入れて遊んでいて、テーブルや床は真っ白だ。瑠奈は換えてやったオムツがずれており、高価な絨毯に尿を漏らしている。糞まみれのオムツを放置していたのがいけなかった。瑠奈はそのオムツをオモチャにして振り回していた。そのせいで、部屋中がとんでもないことになっている。


 この絨毯も高価なもので、母さんのお気に入りだし、僕もこの優雅な柄が気に入っていた。だが、今や部屋中の物に汚物が飛び散っていた。これじゃぁ、僕の優雅な生活が台無しだよ。夜はあかねが作った美味しい夕食を食べ、好きな音楽を聴きながら本を読んで酒を飲む。これがいつものルーティンだったのに


「美優、食べ物で遊ぶんじゃない!」

「うっ、うわぁーーん!」


「瑠奈、糞まみれのオムツをふりまわすな! やばい、換えのオムツがもうないぞ」

「ふぎゃぁーー!」


 もうどうしたらいいのかわからない。秩序だっていた聖なる空間は瞬く間に乱され、けたたましい子供の泣き声で鼓膜がやぶれそうだ。ここはまさに戦場さ。時計を見れば母さん達はまだ当分帰って来ない時間だし、あかねも戻ってこないんだ。不安になってきた僕はあかねの部屋に向かい、クローゼットが空になっているのに気がついた。


 どういうことだ? あかねめ! 無責任すぎるぞ。この子供達の面倒を見るのはあかねの役目なのに!


  

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