第23話 誰に助けを求めるべきなのか
「!」
「!」
ロレンツォとシルヴァーノは、陽の光をまとったようなキューブを一目見て、大体のことを察したらしい。出来る男たちだ。
「それは結界か? 結界で覆っているのか? ……すごい。今年の新入生の中に、特異魔法を使える者がいるらしいとは聞いていたが、ナタリアだったのか」
シルヴァーノはキューブ自体に興味を引かれていたが、ロレンツォはその中身が気になるらしく、
「おい。それは――。実物を見たのは初めてだが、間違いないよな?」
と、ナタリアちゃんに遠回しに尋ねた。
「はい。私も呪い袋だと思います。もうちょっとでカッサンドラが触るところでした」
「そうなのよー。よくわかんないけどナタリアに助けられたみたい。これ、もし触っていたらどうなっていたんだろ?」
「え?」と拍子抜けしたような顔で、三人に見つめられてしまった。
「……お前。知らないのか?」
ロレンツォが目を瞬いた。イケメンのお目目パチパチ。切れ長の目元の威力が半端ないわ。
「あは。あははは。勉強不足みたい。はははは」
私、この世界の常識に疎いもので。
「俺も聞きかじっただけだが、魔力を込めた者の力次第で相当な威力を発揮するらしい。いや、発揮
「ゔぇっ」
私――マジで死んでいたかもしれないじゃない。
ちょっと待って。今ってアナザーストーリーの中だよね。どうして死亡フラグから逃げられないの?
ヒロインの側にいることはリスクを伴うの?
「その魔法は禁じられたはずだ。伝承もされていないと聞いている。もし秘密裏に伝承されていて、実際に使用されたとなると……。これは俺たちの手には余る」
ちょっとロレンツォ! メインキャラが何を情けないこと言ってんの。
「リーダーとして言わせてもらう。これは、すぐさまマヌエル団長に報告すべき事案だ」
「そうなんだけど。そうかもしれないけど。でも……。これが私たちの部屋にあったことをどう思う? 生徒か教官の中に犯人がいるってことじゃない? 犯人とは絶対に無関係な人に相談するべきだと思うんだけど、マヌエル団長なら間違いないって断言できる?」
私だってマヌエル君を信じたい。でもシナリオライターが変態だったら、マヌエル君が豹変する可能性だってあるし。
「それは――まあ、断言はできない」
相変わらずシルヴァーノは正直で素直だな。
「狙いはナタリアか? 特異魔法の使い手と知っている人間の仕業か……? 妬みなんていうレベルじゃないな。ナタリアが力をつけると何か不都合でもあるのか? 平民出身に対する嫌がらせにしては度を越しているからな」
ロレンツォが考え込みながら、ぶつぶつと独り言のように推論をつぶやく。
「もしかしたらこの学園に、ナタリアのことをよく思っていない人物がいるかもしれないってことね。私、貴族の思惑とか、それぞれの力関係とかには疎いから、心当たりがあれば聞かせて」
そう。ロレンツォはサンジョルジュ侯爵家の次男で、シルヴァーノはエルコラーノ伯爵家の嫡男だ。
どちらも男爵家よりも上の序列だから、耳にする情報量も圧倒的に多いはず。
「貴族の? 特異魔法の使い手が絡みそうな話か。なんだろうな。貴族たちの思惑っていう観点だと、真っ先に上がるのは王位継承権争いに関連することだろうが。それはさすがにナタリアとは関係ないだろう。だいたい未成年の出る幕じゃないし」
ロレンツォの発言を聞いて、シルヴァーノが後を継いだ。
「いや。将来のことを考えれば……。だからこそ特異魔法の使い手を危惧したのかもしれない……」
「え?」
ちょっ、ちょっと。イケメン同士で見つめ合っていないで説明してよ。
「……その。私は貴族社会については無知なので。よければ王位継承権争いについて教えてください」
私もっ!
ナタリアちゃんの横で、ブンブンと首を縦に振った。
「まあ別にみんな知っていることだしな。じゃあここはロレンツォの出番だ」
「なんで俺が」
「いいから早く!」
「お願いします」
三対一なのを見てとると、ロレンツォは、「はあ」と大きなため息をついてから話しだした。
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