第五夜 時空間戦争
『宇宙刑事シャイダー』1984~1985年/テレビ朝日=東映=旭通信社
監督:澤井信一郎、田中秀夫ほか 原作:八手三郎 脚本:上原正三
『めぞん一刻』1986年/東映=キティ・フィルム
監督:澤井信一郎 原作:高橋留美子 脚本:田中陽造
『Wの悲劇』(1984年/角川春樹事務所 監督:澤井信一郎 原作:夏樹静子 脚本:荒井晴彦、澤井信一郎)に始まる澤井の快進撃に異論はない。
ただ実写映画『めぞん一刻』だけは「製作段階から悪評続き」、主演の石原真理子に対する悪評に引きずられたとおぼしい。澤井も余りの悪評に圧されていた。
だが、田中陽造脚本は「めぞん一刻を巡る幽霊譚」として当を得ていたと思われる。
高橋留美子が筒井康隆の愛読者であることはよく知られている。筒井の「エディプスの恋人」に登場するビッグマザーを性転換して、ビッグファーザーに仕立てたのが音無惣一郎(ゼロと無限大の間に偏在する唯一者)である。そして、ビッグファーザー=音無惣一郎は、自分の最愛の女性(音無響子)に多幸感に満ち溢れた再婚をしてほしくて「一刻館」という時空間を作りあげたのだ!
「一刻館」が実は「死者たちの盛り場」であることは、田中陽造が既に指摘している。
五代裕作(石黒賢)はもちろん、四谷(伊武雅刀)、六本木朱美(宮崎美子)、一の瀬花枝(藤田弓子)、一の瀬賢太郎(中垣克麻)、七尾こずえ(河合美智子)に至るまで、音無惣一郎の造り出した空中楼閣であった。
では、原作には登場していない男(田中邦衛)と女(萬田久子)の存在意義は? 澤井が『めぞん一刻』に取り組む前の『宇宙刑事シャイダー』では、ビッグファーザーに匹敵する存在として不思議界フーマを操る大帝王クビライが登場する。
あの男も女も「大帝王クビライに不本意だが隷従している手先」と解してはどうか? 男と女の「存在」に腹を立てた音無惣一郎は、二人を「消そう」とするが、女の哀願に取りやめている。
以上が、映画『めぞん一刻』極私的肯定論である。反論歓迎……ただ、やっぱり、石原真理子は「違う」と思うぞ……。
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《コラム》
ただ、「映画芸術」の澤井信一郎総力特集の中で、『宇宙刑事シャイダー』第38話「魔少女シンデレラ」での高橋かおり(早見聖役)の好演に触れていたのが、東映の大泉地区担当だけだったのは、嬉しいような悲しいようなエピソードである。
このヒロインの名を「早見聖」としたのは「早見優ファン」の澤井信一郎であったろうと確信している。
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