〜君との出会い〜

   ♢


「と、いう事でして・・・・」

「なるほど。そうゆう事でしたか・・・。橙果、改めて聞くけど本気なの?本当にその子をうちで面倒見ようと言っているの?」

「うん。お願い!これが一番現実的な解決策だと思うの!」

 私はあの後すぐ両親に電話し、光さんを家にしばらく住まわせたいとお願いした。突然のことに両親は困惑してどうゆう事かと質問攻めにあった。私が説明下手なのもあって収拾がつか無くなってしまったので、とりあえず病院に来てほしいとお願いをしたのだ。すると両親はお店を休みにして二人揃って来てくれ、旗原先生から事の顛末を説明してもらった。


「貴方の助けたい気持ちも分かる。私だって力になれるならそうしたいと思う。でも、それはそれとして、人の面倒を見ると言うことは人の人生の責任を負うことになるかもしれないのよ?それを理解しているの?」

「それは、まぁ、分かっているけど・・・」

「はっきり言って私は反対よ。私たちにも私たちの生活がある。誰も彼もと手を差し伸べる事はできないと思うわ」

 母は先生と同じで私の提案にいい顔はしなかった。どう説得すればいいのか分からなくなっていると、それまでただ私たちの話を聞いていた父が口を開いた。

「橙果、お母さんが言った通り面倒を見るならその責任は持たなきゃならない。そして、それは簡単なことではない。分かるね?」

「うん・・・」

「それを分かった上でそれでもその子を助けたいのかい?」

「うん。このまま見て見ぬ振りはしたくない」

「でも、橙果にその子を助けなきゃいけない責任はないんだよ?むしろ救急車呼んで命を救ってるんだ。それで十分だと思うけどね?」

 父はいつも通り優しい目で私に責任はないよと言ってくれた。私がそこまで気負う必要はないと。だけど、そうじゃない。そうゆうことじゃないんだ。


「そうじゃないの。一番は私が嫌なの。そりゃ、そこまでしなきゃいけない理由はないのは分かっているけどここで知らないフリをしたらずっと今回のことが引っ掛かったままになる気がするの。私はその度に目を逸らしながら過ごしたくない。自分の心を誤魔化しながら生きたくない!」

 そう結局これは私のエゴでわがままでしかない。子供みたい主張しか私には出来ない。自分の無力さに歯痒さを感じずにはいられないが、だからこそ出来ることがあるのなら全力でやりたいんだ。

「偽善と思われてもいい。私はこれを他人事としたくない。だから、協力してください!お願いします!」

 両親と先生に祈る気持ちで深く頭を下げた。診察室は沈黙に包まれる。何を言うべきかと口を開く気配がするが声が響く事はなかった。長い沈黙の後、父の声がようやく鼓膜を揺らした。


「分かったよ。その子はうちで引き取ろう」

「ちょっと、お父さん・・・」

「お母さん、橙果はこうなったら何言っても聞かないよ。僕達が協力しなくてもこの子はなんとか手を貸そうとするよ。なら、僕らがちゃんと見守った方が安全だ。何より僕は橙果に後悔してほしくない」

「・・・っはぁ、分かった。分かったわよ」

「お母さん。いいの?」

「いいも何も、お父さんが言った通り止めても助けよとするんでしょ。ただし、ただ住まわせる事はしないからね。その子の身元を調べるだけじゃなくて家の事とかお店の事もやってもらうからね」

「ありがとう。お父さん、お母さん」

「ということで先生。その子は私達が引き取ります」

「ご両親がそれで納得しているなら私達も出来る限り協力します。早速、今後について話をしましょう。ご両親に、手続きについてなど説明しておきたい事もあるので・・・」

「分かりました。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 肩に入っていた力が一気に抜けるのを感じる。とにかく一番の難所は突破した。両親も協力してくれると言ってくれて、これから光さんが元の生活に戻れるように私も頑張っていくんだって意気込んでいた。明るい日々が訪れると当たり前に思っていた。この時はまだ______________


“人の人生の責任を負う“私は確かにその言葉の重みを理解できていなかったのかもしれない。

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