1話 蓮華寺その8

「アルビノ一乗寺」


一乗寺に着いて駅の周辺を見渡した。

踏切の音と駅員の声が響くだけの比較的静かな住宅街であった。

友人と蓮華寺のことについて話している時に一乗寺という名前が出た。

ラーメン激戦区だとか何とか、そういう話をしていたことを覚えている。

と言うよりそれしか覚えていない。

むしろ地図で見れば一乗寺から蓮華寺まではどう見てもまだまだ離れていた。

それでもなぜここで降りたかと言えば、名前だけは知っている場所であるからだ。

知っている名前の場所は見てみたくなるのが人情だろう。

そんな理由で下車するのも余裕があって良いだろうなと思ったのである。


一乗寺はその名前からして寺の乱立する荒くれの地(寺が乱立しているからと言って荒くれとは言わない)かとも思ったのだが、想像に違い、普通の住宅街であった。

ただ、それでもやはり何かしらの風情を感じてしまっていた。いや、寧ろと言った方がいいのかもしれない。

勿論、京都自体をそういう目で、気持ちで見て歩いている故の、あくまでも先入観だと指摘されればぐうの音も出ないのだが、それでも大阪の街では感じない何かを感じてしまう。

だって、白が基調のファミリーマートなんて見たことある?

そういうことである。

さて、当てもなくフラフラとという訳にもいかない時間になりつつあった。

ふらつくのは程々に、このまま白川通に出て蓮華寺に向かって歩いてみることにしよう。

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