1話 蓮華寺その5

「鴨川等間隔の法則」


歩いている途中鴨川を眺める。

私は京都で生まれ育った訳では無いから、この川に果たして京都の若者達を中心とした、京都に住まう人々がどんな願いや思いを込めているのかは分からない。

ただ、面白おかしく等間隔に並ぶカップル達を揶揄するようなテレビ番組を見る度に、その心情が気になってしまう。


流石に11月も終わりに向かう、冬の入口であるような季節だから座っている人々はまばらだった。

夏には豪奢に並ぶ納涼床を背にしたその場所が、とても物悲しく見えた。


鴨川沿い、橋の架かった場所と各交差点に置かれた、京阪電車のホームへ降りる階段付近はどこも騒がしい気がする。

今回は三条駅あたりの交差点で三味線を一心不乱にかき鳴らす外国人を見つけた。

そこから三条通に向かって三条大橋を渡った河川敷には、橋の上にいる人々へ向けて橋下からアクロバティックなパフォーマンスを見せる若者がいた。


和洋折衷と言うのか、きっちりとハマる言葉が出てこなかったが、何となく不思議な感覚に陥ったあとで、先斗町の街並みを思い出し、ただその振り幅が面白く笑った。

そこで改めて京都に惹かれるところを考えようとしたのだが、河川敷を歩く短パンに裸足の老人を見つけてから、私はもう考えるのをやめた。

京都も関西の他の地と同じように、いや、それ以上に懐の広い場所のようである。

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