1話 蓮華寺その4

「おいでよ京都」


河原町に着くとひとまずGoogleマップで本日の目当ての場所を改めて調べてみた。

時刻は15時前である。

とりあえず祇園四条方面に向かおうと地上に上がった。


京都は何度も来ている。

田舎から引っ越してからというもの、1人の日々を慰めるばかりであったが、時折なぜだか無性に京都に行きたくなる時があった。


まぁ、単純に様々な話の舞台であったり、学生時代に興味を割いていた新撰組が闊歩した街であったり、そうでなくとも何故だか日本にとって最も特別な場所のように感じるその土地に対して、私自身過剰な期待を抱いているのだろう。


自分を変えてくれるかもしれないというバカバカしいような期待をふんだんに抱えて電車に乗っていた20代前半を思い出して、少し笑ってしまう。

地上に出るとなんとも明るい日が差していた。

そして、電車では感じないほどの人の波も。

いつも河原町の商店街はバカのように人がいる。

その為まるで興味が無いようにツンとした表情で、逃げるように歩き始めたのだが、それも人のあまりの混み具合に負けてしまい、掻き分けることも出来ないまま波に屈伏させられたのである。


鴨川に係る四条大橋の上も人の大洪水であった。

水を渡る橋の上が洪水とは如何に、とも思ったがこれも休日の京都の宿命であろう。

大人しく洪水の流れに身を任せながら、何とか京阪祇園四条駅に降りる階段の前までたどり着き、京阪電車で出町柳駅まで、と思ったのだが少しここで一考。

折角の京都だ、歩こうと思い立った。

私は気の向くまま、ふらふらと川端通を北へ向かって歩き始めた。

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