1話 蓮華寺その3

「みんな大好き阪急電車京都線」


休日の昼間の阪急電車はなんとも人が多い。

今回は京都河原町駅へと向かうので、まだ程々であるが、これが梅田方面であればと思うとぞっとする。

いや、それ以上に平日の朝は比にならないほどの人混みであるから、舐めたことを、とお思いの方もおいでであろうが、やはり人の多い電車に慣れていないと、車内に足を踏み入れた時に広がる光景に口が塞がらないのだ。

まるでテトリスのブロックのようにして、隙間隙間に入り込んだ人を見るのは、心にくるものがある。


まぁ、そこまでとは言わないが、程々に人の多い車内は色々な匂いが立ち込めていた。無機質な車内の匂いにお昼時の臭い、汗とシャンプーに香水の混じった匂い。それらが1つとなれば、まるで遠くから見てもひとつの生き物みたいで恐ろしく見えることもあるだろう。


そうこうしている間に高槻駅に着いた途端、まるで氷が溶けるようにしてするすると人が流れ出ていった。

満員だった車内は嘘のように人がまばらになり、座席にも座ることが出来た。

電車の大雑把な暖房と冬場の澄んだ空気感と線の細い鋭い日差しが差し込んで、心地よくてうつろうつろと首を揺らす。

どうにも面白いことは起きそうに無かった。

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