第9話  告白の後 ②


「これが私の身に起きた全部です」


嘘と思っても構いません。証拠もありません。


頭がおかしい小娘の戯言です。


私の告白から先に回復したのは、莉佳子さんだった。


「うーん正直な話、どう信じたら良いかもわからない」


「そうですね」 私は少し悲しくなった


「でもね。あなたが思い詰めていること。悠の事をすごく好きだったのは判った」


「信じてくれるんですか!嘘かもしれないんですよ!」


「そんな嘘ついて誰も徳しないわよ」と笑った。


「それに何、その先輩が一番悪いんだけど、次に悪いのは悠よね」

そう言って悠さんを見つめる。


「えー私が悪いの。覚えていないんだけど」そう言って母親に抗議する。

「それに私ならそんな遠慮はしないよ!好きって告白する。だって恋は先手必勝じゃない」


ああ この悠さんならそうだろう


「でもあなたも悪いわよ。いくら怖いからって自分の意志を持たなくちゃ。子どもじゃないんだから。嫌なことは嫌だと主張しなさい。あと、他の人を頼ること。自分ひとりで無理ならなおさらね」


「はいそれについては反省します」だからこそ今度は強い人に憧れた。


私は悠さんを正面から見つめ静かに口を開く。


「悠、沢山悠のこと傷つけてごめんなさい。悲しませてごめんなさい」


私は悠さんに頭を下げた。


「いや、私じゃないでしょ」悠さんが小声で呟いた。


そう。この人は悠ではない 全く別の誰かだ


「私が勇気を出して告白していたらと、何度も後悔した」


悠くんはもうどこにもいない。けど話したかった。言いたかった。


「私は悠の事が好きです。あたしと付き合って下さい」


悠さんの目が点になった。


莉佳子さんは「あらあら」って笑ってる。


私は彼女に向かって右手を差し出した。


「なにこれ。この手を取らなきゃいけないムードは」


彼女は乱暴に髪をかきあげると、どこか恥ずかしそうにしながらも、

私の目を真っ直ぐに見て言った。


「わかった。あなたの謝罪を受け入れます」


真摯な目で


「それと、告白は考えさせて。あたしこれでもノーマルだからさ」


ええと。そう受けてしまいましたか。


どうしようと莉佳子さんの方を見ると


「あたしはどっちでもいいわよ。好きな者同士が結ばれるのが一番だから」


親としてそれはすごいですが、色々困りますよ、後々。


「わあ」


「ちょっと!」


安堵した私は両手を広げ抱きついた


「ありがとう。ごめんね」


「うん。大丈夫?」


今度は吐き気が出ることもなかった。


「もう大丈夫だよ」


困った表情浮かべていた彼女は、良かったねと呟いた。

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