第9話 告白の後 ②
*
「これが私の身に起きた全部です」
嘘と思っても構いません。証拠もありません。
頭がおかしい小娘の戯言です。
私の告白から先に回復したのは、莉佳子さんだった。
「うーん正直な話、どう信じたら良いかもわからない」
「そうですね」 私は少し悲しくなった
「でもね。あなたが思い詰めていること。悠の事をすごく好きだったのは判った」
「信じてくれるんですか!嘘かもしれないんですよ!」
「そんな嘘ついて誰も徳しないわよ」と笑った。
「それに何、その先輩が一番悪いんだけど、次に悪いのは悠よね」
そう言って悠さんを見つめる。
「えー私が悪いの。覚えていないんだけど」そう言って母親に抗議する。
「それに私ならそんな遠慮はしないよ!好きって告白する。だって恋は先手必勝じゃない」
ああ この悠さんならそうだろう
「でもあなたも悪いわよ。いくら怖いからって自分の意志を持たなくちゃ。子どもじゃないんだから。嫌なことは嫌だと主張しなさい。あと、他の人を頼ること。自分ひとりで無理ならなおさらね」
「はいそれについては反省します」だからこそ今度は強い人に憧れた。
私は悠さんを正面から見つめ静かに口を開く。
「悠、沢山悠のこと傷つけてごめんなさい。悲しませてごめんなさい」
私は悠さんに頭を下げた。
「いや、私じゃないでしょ」悠さんが小声で呟いた。
そう。この人は悠ではない 全く別の誰かだ
「私が勇気を出して告白していたらと、何度も後悔した」
悠くんはもうどこにもいない。けど話したかった。言いたかった。
「私は悠の事が好きです。あたしと付き合って下さい」
悠さんの目が点になった。
莉佳子さんは「あらあら」って笑ってる。
私は彼女に向かって右手を差し出した。
「なにこれ。この手を取らなきゃいけないムードは」
彼女は乱暴に髪をかきあげると、どこか恥ずかしそうにしながらも、
私の目を真っ直ぐに見て言った。
「わかった。あなたの謝罪を受け入れます」
真摯な目で
「それと、告白は考えさせて。あたしこれでもノーマルだからさ」
ええと。そう受けてしまいましたか。
どうしようと莉佳子さんの方を見ると
「あたしはどっちでもいいわよ。好きな者同士が結ばれるのが一番だから」
親としてそれはすごいですが、色々困りますよ、後々。
「わあ」
「ちょっと!」
安堵した私は両手を広げ抱きついた
「ありがとう。ごめんね」
「うん。大丈夫?」
今度は吐き気が出ることもなかった。
「もう大丈夫だよ」
困った表情浮かべていた彼女は、良かったねと呟いた。
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