第8話  告白の後 ①

「・・・私は悠くんを死なせてしまった」


突然の告白に皆言葉も出なかった。

悠は私の手を優しく撫で続けていた。


私も混乱してたけど、莉佳子さんはそれ以上に困惑を隠せないでした


「えーっと、未来から来たってこと?」


私は慎重に頷く。

多少違うかもしれないけど、その差異を説明できる自信がなかった。


彼女は自分の中で考えているようだった。


「それで未来から来た陽菜はそこの世界で悠を殺したというの?」


「自分がやったわけではないけど、結果的に彼を追い詰めてしまった」


「彼?って悠だよね」


ああ。 そうだった。


「悠さんは私がいた世界では男の子だったんです」


「男の子」


莉佳子さんはそう呟いて私の隣りにいる悠さ

んを見つめる。


「そうなの?」


「いや知らないし」


ああ こんな時だと言うのに微笑ましい会話です


「それで、男の子のこいつはアンタになにかしたんだね」


「そんな人をなにかみたいに・・」



「私と悠くんは幼馴染で、中学までずっとクラスも一緒でした。


私は彼のことが好きでした。それこそ初めて会った時からずっと。


高校に上がってもその気持は変わらず。

でも臆病な私は自分から告白して振られることが恐れてしまった。

彼が告白するまで待っていたんです。


「アンタとは違うね」


「うっさいなーもう」


そんな中私たちが入っていたクラブにいた先輩からしつこく交際を求められました。私はもちろん断り続けました。

私たちの中を知っていたのでしょう。

その時は先輩は大人しく引き下がりました。 

その時はそう思ったんです


このあとを言うのは怖い


「無理して言わないでもいいのよ」そう莉佳子さんの声に、


いえ大丈夫です。続けます

私は深呼吸した。


「彼が風邪で休んだ日。部活はその先輩と私だけでした。嫌な予感がしたので早々に帰ろうと席を立った途端」


それ以上は声にならなかった。私は床に泣き崩れてしまう


「もういいからね」

莉佳子さんが背中からそっと腕を回し、私を抱きしめる。

こんな時だと言うのに私は吐き気が込み上げてきた。

でもお陰で持ち直せた。


「その時無理やりキスされた。私は怖くて気持ち悪くて声も出せませんでした」


そう、ただ震えているだけで。

そうして後はあっという間だった。


その時のことを写真に撮られ、彼にバラされたくなければ言うことを聞けと


私に選択の余地はなかった。

彼に知られることが怖かった

気まずくなった私は彼を避けるようになり、部活中も見せつけるように先輩は私の肩を抱いたりした。すぐ振り払ったけど、そんな私のことを見て先輩はニヤニヤ笑ってた。そんな中

私と先輩が付き合っているという噂が流れた。


それが彼の耳にも入ったようだった。


何度か説明しようとしたけど、彼は徹底的に私を避けた。

説明する機会もなく、先輩との逢瀬の回数だけが積み上がり、その度私の中の何かが壊れていった。


そしていつの間にか彼は部活をやめていた。

誰だって会いたくないですよね

彼だってこんな子 関わりたくないですよね。


もうこんな私じゃ彼にふさわしくないし。


彼に会えなくなった日々、貴重な放課後の時をドブに捨てるように消費した。



そんな日

学校を休みがちな彼に呼び出されたのは。

私は喜んでその場所に向かいました。


これは誤解をとく最後のチャンス。

既に誤解ですらなかったけど、その時の私はそう思った。


しかし、約束の場所には先輩がいていつものように私の体を求めました。


時間が無いのに!

焦った私は急いで服脱ぎ始めた。


さっさと済ませて先輩を追い出したかった。

そうしてなんとか約束の時間に1人で待つことが来ました


でもその日、彼が現れることは無かった。

不安な気持ちで家に帰る。


急用でも出来たのかな


彼からはなんの連絡も来ていなかった。


次の日私は彼の訃報を知った。


「なんで・・・」


「なんでって、あんたのせいじゃない!」

泣いているクラスメートが私を責めた。


「あんたがこんなことしてるから」


そう言って彼女が見せたスマホには、屋上での私との先輩の様子が映ってました。

遠くからの盗撮でしょう。


それでもこれに写っているのが私という事は分かりました。


私はその後生徒指導室に呼び出されました。

こんな噂があるがどうなんだと。


「はい、それは私です」

私は即日退学となった。


自宅では父親に殴られた。

母には泣かれた。


ごめんなさい

みんな私のせいです。



先輩はコネでもあったのか、転校という形になった。

転校先で女の子と毎日楽しく過ごしていると元クラスメートがあざ笑うように教えてくれた。

もうどうでもいい


自宅から出ることも失く、食事も取らなくなった私は次第に衰弱していった。


お願いだから食べて

そう言って泣いていた姿を思い出した。

あれは母だった。


混濁した意識の中で、私は願った。

天国で彼に謝ろう。それだけを楽しみに

でも私は地獄行きだと気が付いたけど



そうして意識が薄れる中、

再び雑踏の音が聞こ超えた。


私は立ってた


そこは


私がいなくなった世界から半年前の世界。 


入学式当日に来てしまったのでした。



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