第35話 待ち合わせキャンセル

 隆三は約束時間の10分前に、指定された場所に到着する。


 美香はまだやってきていないのか、姿は見えなかった。隆三はゆっくりと待とうと思った。


 待ち合わせ時間から15分オーバーしても、美香はやってこなかった。何か連絡が入っているのではないかと予測し、スマホを確認することにした。予想していた通り、連絡を一件受け取っていた。


「三八度の熱が出たので、今日の予定をキャンセルさせていただきます。こちらから誘ったのに、本当にごめんなさい」


 三八度の熱では、外出するのは難しい。キャンセルはやむを得ないと思った。


「わかりました。お大事にしてください・・・・・・」 


 沙月とデートしていたときのことを思い出す。あいつはどんなに高熱だとしても、キャンセルを許さない最低最悪な女だった。相手の体調よりも、自分のスケジュールを優先させていた。


 待ち合わせキャンセルされたことで、時間に余裕が生まれた。暇な時間は何をして過ごそうか。


 自宅に向かっている途中で、沙月と思われる人物を発見。あいつと関わるとろくなことにならないので、身を隠すことにした。


 沙月は気づいていないのか、こちらにやってくることはなかった。間一髪で難を逃れたことに、安堵の息をついた。


 沙月を巧みに回避したあとは、ゆっくりと自宅に向かった。ゆったりと歩いていたことで、普段とは異なる景色を楽しむことができた。

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