第30話 光さんに会いたい(英彦)

 学校だけでなく、休日も光さんに会いたい。英彦は一人の部屋で、そのようなことを考えていた。


 いろいろな誤解があって嫌われたけど、挽回の余地は十分に残されているはず。自分の良いところをたくさん知ってもらって、彼女のハートを釘付けにしてやる。


 英彦はラインから、沙月の名前を削除。あいつと関わったら、自分の評価をさらに落とすことになる。クソ女は生きていること自体が、疫病神そのものだ。


 英彦の部屋に、母が入ってくる。普段は温厚なのに、今日に限ってはめちゃくちゃ怒っていた。


「英彦、学校でストーカーしているみたいだね」  


 母親の言葉を聞き、スマホを地面に落とした。


「図星みたいだね・・・・・・」


「僕はストーカーなんかしていない。光さんと接し続ければ、いつかは好きになってくれるはず」


 自分は世界で一番の魅力を持つ男。絶対的な事実は、何人たりも否定することは許されない。


「男だったら、一度フラれた時点で諦めなさい。女は付きまとう男を好きになったりはしないから」


 光さんへの恋心を全否定された。英彦はその事実に対して、頭をくちゃくちゃにする。


「光さんへの恋をバカにするな。僕と彼女は相思相愛に絶対になれるはずなんだ・・・・・・」


 母親に突進したあと、全力で階段を下りる。途中で足を踏み外してしまい、転落することとなった。


 高いところから転落したとあって、ケガは軽くなかった。英彦は一カ月以上の、長期入院を余儀なくされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る