第28話 穴があったら入りたい(ともみ編)

 寝言とはいえ、本音を暴露するなんて。あまりの恥ずかしさに、穴があったら入りたいと思った。


 隆三を好きになったのは、一年生の文化祭のとき。さりげない仕草に対して、胸はおおいにときめくこととなった。


 交際したいと思ったけど、当時は彼女がいた。迷惑をかけてはいけないと、意図的に声をかけないようにしていた。


 隆三の破局後、同じグループで活動する機会を得た。どんなことがあっても、チャンスを生かしたいと思った。


 ストーカー男のせいで、グループはすぐに解散。接点を再び失うこととなり、灯は完全に消えたかのように映った。


 光からの誘いによって、隆三と遊びに行けることになった。あまりに嬉しさからか、家の中で「ヤッホー」という大きな声を出した。下の階まで聞こえていたらしく、母親から注意された。


 大好きな人に会える興奮で、2時間ほどしか寝ていなかった。脳が興奮しており、とても眠れるような状況ではなかった。


 あと2~3時間くらい眠れていたら、恥ずかしい思いをせずに済んだ。睡眠不足のまま、カラオケに参加したことをおおいに悔やむ。


 一方的な想いで、体を寄せたのもよくなかった。確認をしっかりと取ってから、やったほうが絶対によかった。隆三は明らかに困惑した表情を見せていた。

 

 今回の大失態により、評価を大きく落とす。プライベートで遊びに行くチャンスをほぼ失ったに等しい。


 ラインを確認すると、二件の連絡が入っていた。一件は光、一件は隆三からである。


 光からのラインには目もくれず、隆三のラインを確認する。


「今日はありがとう。いろいろと戸惑うこともあったけど、有意義な時間を過ごすことができた」


 社交辞令さながらの文章に、胸の中にある不安は増すこととなった。明日から一言も口をきいてもらえなかったらどうしよう。

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