第27話 光、ともみに寝言の話をする
光、ともみは目を覚ました。睡眠時間はおおよそ、90分くらいといったところだった。
「私、眠っていたの?」
ともみからの問いかけに、隆三は肯定の意志を示した。
「うん。しっかりと眠っていたよ」
90分で起きてこられたのは、奇跡といっていいレベル。深い眠りからは、4~5時間の睡眠を取ると予想していた。
カラオケの照明は少しだけ暗くなった。時間帯によって、電気の量を調節しているのかなと思った。
光は眠気が取れていないのか、瞼をごしごしとこする。
「天音さん、よく眠れた?」
光は小さく頷いた。
「それなりには・・・・・・」
光、ともみは状況を察したのか、腕を勢いよくはなした。身動きを制限されていた男は、90分ぶりに自由を取り戻すことができた。
「七瀬君、ごめんなさい・・・・・・」
「いつからこうなっていたの?」
隆三は正直に答える。
「二人が眠ってすぐだよ。時間にすると90分くらい」
90分も続けていたことを知り、二人はおおいに慌てることとなった。本人たちにはいえないけど、慌てふためている姿はとてもかわいかった。普段とは違う姿に、新鮮さもあった。
「七瀬君、お詫びをいつかさせてね」
ともみも続いた。
「私もしっかりとお詫びしたい」
腕をつかんでいたことよりも、さらに大きな失態を犯している。隆三はそのことを、二人に伝える。
「天音さん、奏楽さんは眠っているときに、七瀬君大好きといっていたんだけど・・・・・・」
光、ともみの顔色は、トマトよりも赤くなった。
「そんなことをいっていたの?」
「七瀬君、冗談でしょう」
嘘だと信じたい二人に、本当のことを伝える。
「ドリンク注文を取りにきた女性店員の前で、聞こえる声でいっていたよ」
光。ともみは石さながらに硬直。遠くから見れば、生きているようには見えないレベルだった。
オレンジジュースは持っていた状態のまま。氷はすでに解けて、味は薄くなっている。
3人のいるカラオケルームに、先ほどの女子店員が入ってきた。
「もうすぐ終了です」
2時間のカラオケは,一曲歌っただけで終わる。歌うためにやってきたのではなく、睡眠を取るためにやってきたみたいだ。
隆三の体内には、二人の女性の体温がはっきりと残っていた。とても優しく、包み込んでくれるかのようだった。
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