第25話 座り方はどうにかなりませんか?

「天音さん、奏楽さん・・・・・・」


「七瀬君、どうかしたの?」


「身動きできないくらいに、距離が詰まっているんですけど・・・・・・」


 隆三は真ん中、ともみは左、光は右に座っている。体は非常に近く、おしり、太腿などが触れてしまっている。あとちょっと接近すれば、胸が当たる可能性もある。


「気にしない、気にしない」


「そうだよ。気にしたら負けだよ」


 沙月のことがあったばかりだけに、女性に距離を詰められることに恐怖を覚えていた。


「天音さん、奏楽さん、もっとはなれてください。痴漢冤罪に巻き込まれたくありません」


 光、ともみは挑発するためなのか、さらに距離を詰めてくる。目だけでなく、手のやり場に困るレベルだ。


「痴漢扱いするために、距離を詰めているわけではないよ」


「そうだよ。私たちはこうしたいから、こうしているだけだよ」


 二人の話を聞いても、意図はさっぱりわからなかった。


「七瀬君はもっとわがままになっていいんだよ」


「そうだよ。遠慮しないでね」


 二人の美しい女性に囲まれ、男としての理性は完全崩壊しようとしていた。


「七瀬君、三人で歌おうよ」


 ともみは席を立った。隆三は解放された隙を狙って、端っこにすばやく移動しようとする。ここならば、ゆっくりとカラオケを楽しめる。


 光は行動を先読みしていたのか、隆三の腕をつかんだ。


「七瀬君、逃げるのはダメだよ」


「光さん・・・・・・」


「今はいえないけど、いつかは伝えたいことがあるの。ちょっとだけの間でいいから、わがままを許してほしい」


 ともみは3つのマイクを持って、自分の席に戻ってきた。


「天音さん、七瀬さん、一緒に歌おう」


 ともみの選んだのは最高到達点。ONE PIECEで使用された曲である。


 本能を封印するために、大きな声を出して歌った。ストレスがたまっていたからか、とっても気持ちよかった。


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