第22話 アピールしてみるか(沙月編)
隆三は一人で登校してきた。沙月はそれを確認すると、彼にゆっくりと近づいていく。
「人の評判をおとそうとした女が、何の用で近づいてくるんだ。本気でセクハラをでっちあげるつもりなのか?」
痴漢のでっち上げは、彼の耳にも届いていた。私はそれでも、諦めずに接近を試みる。
「あれはちょっとしたジョークだよ。本気でやるわけないでしょう」
沙月のいるところに、光、ともみがやってきた。二人は元々、グループで活動していた。
「速水さん、痴漢をでっち上げようとしているんだね」
「私たちは絶対にそんなことはさせないから」
光は隆三の左手、ともみは隆三の右手を握った。
「彼の手はつながれている。どんなことをしたとしても、痴漢被害で訴えらえることはない」
光、ともみの瞳から、彼に対する思いを感じた。一人だけでなく、二人とも好きという感情を持っているというのか。優秀な頭を持っていても、脳内整理が追い付かなかった。
「七瀬君、教室に行きましょう」
「三人でたくさん話をしましょうね」
光、ともみは強引に、隆三を教室に連れ込む。私は声をかける機会を完全に失った。
「光さん、光さん・・・・・・」
英彦はがっくりと膝をつく。光が誰かと手をつないでいることに。大きなショックを受けていた。
「沙月さん、なんとかしてくれよ・・・・・・。光さんを誰にもとられたくないよ」
未練がましい男と関わると、人生が暗転するだけ。沙月はまっすぐに教室に向かった。
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