第16話 英彦の狂気じみた執念

 隆三のところに、英彦が近づいてきた。


「七瀬君、話があるんだけど・・・・・・」


 巨漢にあれだけ諭されても、まだあきらめていないのか。見た目はひょろひょろだけど、心の中は執念の塊だ。こんな性格をしていたら、連絡先を教えてもらえないのは当然だ。 


 話を聞く気にもなれなかったので、適当な理由をつけて離れようと思った。


「トイレに行くから・・・・・・」


「一〇秒だけでいい。話を聞いてくれ」


 一〇秒であっても、時間を割きたくない。そのように思った男は、すぐにトイレに向かおうとする。英彦はそれを察したのか、勝手に話を始めだす。   


「美香さんは魅力いっぱいだぞ。交際したら楽しいことがたくさんあるぞ」


 美香と交際させることによって、光と距離を取らせようという作戦か。頭の腐っている奴が、思いつきそうな手段である。


 わかりきってはいたけど、とりあえずは聞いてみることにした。整合性が取れなければ、こいつのでっちあげであることが確定する。


「美香さんからの差し金なのか」


 英彦は自信満々に返事をするも、うさん臭さだけを感じ取る。


「ああ、そうだ。美香さんからそのように頼まれた」


「本人に確認を取っとく。最初から事実とは思っていないけど、万が一ということもあるから」


 隆三、英彦のいるところに、二人の女性が近づいてくる。一人は光、一人は美香だった。


「私はそんなことはいっていないよ」


 英彦は好きな人から、強烈な敵意を向けられる。


「あんたはどこまでも最低だね。正々堂々と勝負しようとは思わないの」


 光は最終通告をする。


「次に何かあったら、学校に相談するからね。警察に行くかもしれないよ」


 推薦で進学する人が多く、不祥事は致命傷になりかねない。効果的なポイントをおさえているため、少しは大人しくなるかなと思った。


「七瀬君、男にたっぷりといいたいことがあるの。三人だけにしてくれないかな」


 光、美香はガチで怒っている。英彦はおびえているらしく、体をブルブルと震わせていた。 

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