第14話 英彦はしつこかった

 トイレに向かっている途中で、英彦に声をかけられる。


「七瀬君、連絡先を教えてほしい」


 本人に却下されたのに、連絡先を知ろうとする男。危ないにおいがプンプンとした。


「本人に頼めばいいじゃないか」


「三度ほどお願いしたけど、取り合ってもらえなかった」


 第三者に聞き出そうとしたことで、評価は地に堕ちた。0から回復させる機会すら与えられることはなさそうだ。


「ラインアドレスを知ったとしても、別のものに変えられたら終わりだ」


「新しいアドレスになったときは、また教えてくれればいいだろ」


 光への思いが強すぎて、自分を見失ってしまっている。その姿を見て、必死になり

すぎるのは良くないと思った。


 二人のいるところに、巨漢の男がやってきた。体重を少なく見積もっても、100キロ以上はあると予想される。


「天音さんのことはあきらめろ。おまえだけは絶対にないことを知れ」


 英彦は必死に否定する。都合の悪い真実を認めたくないらしい。


「そんなことはない。必死に思いを伝えたら、絶対に分かってくれるはず」


 必死になりすぎることを、ストーカーというんだよ。現状のこいつにいっても、耳には届かないだろうな。


 巨漢の男は、さらに厳しい言葉を投げかけた。


「彼には連絡交換を申し込んだけど、おまえとは連絡交換しなかった。これはどういう意味なのか分かるか」


「そんなのはたまたまだ」


 巨漢男は息を吐き出す。


「天音さんはおそらく、彼に興味を持っている。友達としてみているのか、好きなの

かはわからない部分もあるけど・・・・・・」


 英彦は好きという部分を懸命に否定する。


「変な気を起こしたら、ブロックするといっていた。好きということは絶対にありえないはずだ」


 光は確かに、ラインをブロックするといっていた。友達としては見ていても、恋愛対象ではないことは確かである。 


「問題児を部に置いておくのは難しい。次に何かあったら、すぐに退部させるから」


「部長、それだけは・・・・・・」


「地区大会に向けて、必死に取り組んでいる。一人の悪事によって、台無しにされるのは勘弁だ」


 100人の部員がまじめにやっていても、一人の部員の不祥事で活動停止に追い込まれることもある。日本では理不尽といえるレベルで、共同責任にしようとするのは否めない。 

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