第13話 元カレの評判を落としてやる(沙月編)

 誰からも相手されないのは、元カレのせいである。とんでもない噂を流して、地獄の道連れにしてやる。


 ありえないことをいっても、信用を勝ち取るのは難しい。本当ではなくても、実際にありえそうなデマを流すのがポイントとなる。


 沙月はターゲットを見つけると、元カレについてのデマを流す。評価をおとして、地獄を見させてやるんだから。


 相手は信じるかと思ったけど、そういう展開にはならなかった。眉間に大量の皺を寄せて、


「元カレを貶めるために、デマを流そうとしているのか。一人の人間として、腐りきっているみたいだね」


 といった。完全に読まれてしまっていることに、大いなる焦りを感じた。


 沙月は信じてもらうために、必死に演技をする。天から何もかもを与えられた女は、演技力についても大いなる自信があった。


「私のいっていることは全部本当だよ・・・・・・」


 声をかけた女性は、ボイスレコーダーらしきものを見せる。学校にどうしてそんなものを持ってきているのか、まったく理解できなかった。


「あなたの話については、すべて録音してある。放置しておけないから、学校の先生に提出しておくね」


 学校で問題を起こしたら、推薦をもらえなくなる。エリート街道を歩むためには、絶対に阻止する必要がある。


「さっきのはジョークだよ。真に受けないようにしてね」


 ターゲットの女は大きな溜息をつく。


「放置するなんて絶対にありえないから。今回の件については、教師だけでなく学校中に広めておくからね。あなたにとっては、さらに居づらい場所になるかもしれないね」


 女性はすぐさま、いろいろな人に声をかけていた。ボイスレコーダーを持っていたこともあって、言い逃れはできなかった。


 一人はダメだとしても、もう一人くらいは信じてくれる。第二のターゲットにデマを吹聴することにした。


「自分から別れたのに、まだ付き合っていると主張できる。あなたのような人間には、絶対になりたくないね」


 味方は一人もあらず、完全アウェイの状態となっている。日を改めて、デマを吹聴したほうがよさそうだ。


「ジ、ジョークだよ」


 とだけいい、学校からいなくなった。

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