第11話 グループはバラバラに
6人の男女グループは正式に解散した。
わずかな期間だったけど、心の支えになった。メンバーには感謝しても、感謝しきれなかった。
一人だけ例外がいる。光の電話番号を強引な方法で知ろうとした男だ。あいつが本性を露わにしていなければ、男女グループは関係を保つことができた。
隆三の座っている席に、光がやってくる。ロングヘアーをくくっていたこともあり、別人さながらである。
「七瀬君、おはよう」
光は露出している足に、しきりにカイロを当てていた。
「天音さん、おはよう」
「今日は結構冷えるね。体調管理をしっかりとしよう」
本日の最高気温予想は16℃。コートを羽織っていないと、肌寒く感じるレベルだ。
光は寒さに負けたのか、ヘクチュンという咳をする。距離をあまりとっていなかったからか、鼻水の一部が顔面にかかった。
「七瀬君、本当にごめんなさい。汚いものをかけてしまったね」
隆三は大人の対応を取った。45分の遅刻を許してもらったので、これくらいは流しておこうと思った。
「天音さん、気にしなくてもいいよ」
隆三はポケットティッシュで、鼻水をていねいに拭きとっていく。それほどかかっていなかったので、すぐに終わった。
光はポケットの中から、ハンカチを取り出す。
「よかったら、これを使ってね」
汗を拭きとったハンカチと、色、柄はそっくりだ。汗のついたハンカチは処分済みだと思っていただけに、驚きを隠せなかった。
「ありがとう・・・・・・」
隆三は顔を拭き終えると、光は手を差し出す。
「こちらの不手際だから、ハンカチは回収させてもらうよ」
隆三はハンカチで顔を拭いたあと、きっちりと折りたたんでから返却する。元の形には戻せなくても、できる限りは近づけたいと思った。
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