第10話 グループ解散を伝えられる

 夕食を食べ終えた男のところに、ラインが送られてきた。


「隆三、元気にしているか?」


「ぼちぼちといったところだよ」


 あんなことがあったばかりなので、いつもと比べると元気はなかった。それでも、つらいと思うレベルではなかった。


 隆三は今日の出来事を伝える。


「小林君から、天音さんの連絡先を教えてほしいといわれた。必死な姿を見ていると、好意を持っているのを感じた」


「隆三、そのことに気づいたのか」


「あんなに必死なところをみたら、そうとしか思えなくなった」


「英彦は一年生のころから、光さんを好きだったみたいだ。どうにか近づこうとしたんだけど、まったくうまくいっていなかった。隆三が連絡交換をしているのを知って、なんとかしたくなったんだろうな」


 片思いのまま、一年以上が過ぎていく。恋愛にありがちなシチュエーションといえる。


「今回の件で、5人グループは解散することになった。あんなことがあったら、一緒に活動するのは無理だ」


「それしかないだろうな・・・・・・」


 信頼を築くのは時間がかかるけど、壊れていくのは一瞬で終わる。これはすべてのものに共通している。


「せっかく誘ってもらったのにごめん・・・・・・」


「隆三は気に病む必要はない。今回のことがなくても、遅かれ早かれ解散していたはずだ。天音さん、奏楽さんは恋人作りに専念したいといっていたから」


 男女グループにいると、恋愛にマイナスに作用する。それについては、当たっているといえる。


「天音さんはどうして、男子と連絡交換をしていなかったんだ」


「理由についてはわからない。こちらからは聞く必要もないから、そっとしたままにしていた」


 菊一もおそらく、連絡交換をしたかった。そうだとしても、光の意思を最優先にした。グループを守るためには、一定の距離を保つ必要がある。

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