第9話 英彦から危ないものを感じた
隆三は帰宅途中に、英彦に声をかけられた。
「七瀬君、お願いがあるんだ。校舎の裏まで来てくれないか」
「どんな用事なんだ」
「ここではいえないから、誰もいないところで話したい」
ここではいえないか。その言葉を聞いただけで、普通にお願いするのは難しいことは想像がついた。
隆三、英彦は校舎裏に歩いていく。前ばかりを向いていたからか、誰かにつけられていることに気づいていなかった。
二人は校舎裏に到着。放課後とあって、誰もいなかった。
「小林君、お願いというのは・・・・・・」
「天音さんの連絡先を教えてほしい」
男女5人はずっと一緒にいる。連絡交換くらいは、しているものだと思っていた。
「天音さんと連絡交換をしていないのか?」
「グループ内で連絡交換をしているのは、奏楽さんだけだ。他のメンバーについては、連絡先を知らない」
「それならどうやって、集合場所に集まっていたんだ?」
「奏楽さんが全員のアドレスを知っていて、各々にラインを送っていた。その情報をもとに、僕たちは集まっていた」
同性とは連絡交換しても、異性とはアドレスを交換していない。光の中では、きっちりと線引きをなされている。
「英彦君の気持ちはわかるけど、天音さんに許可を取らないといけないから・・・・・・」
光に無断で教えたら、敵に回る可能性がある。学校中に入らぬ噂を流され、通学歯肉状況になりかねない。
「何とか頼むよ。天音さんと距離を縮めていきたいんだ」
英彦の言葉から、好意を持っているのを察する。一人の男としては応援してあげたいけど、こればかりはどうしようもなかった。
「本人に直接許可を取ってくれ。それをできないのであれば、やすやすとアドレスを渡すのは無理だ」
「そこをなんとか・・・・・・」
光、英彦のところに、女性の声が聞こえた。
「七瀬君、絶対に教えないように・・・・・・」
二人のところに光が姿を見せる。当人と顔合わせするとは思っていなかったのか、英彦は口をパクパクとさせた。
「天音さん・・・・・・」
光は別人みたいに、怒気を含んでいた。
「自分で聞けばいいのに、他を頼るなんて最低だね」
「天音さん、これは・・・・・・」
光は悲しさ、怒りを交えた瞳になった。
「小林君と関係を続けるのは無理だね。他のメンバーに話をして、男女グループからも脱退することにするよ」
素直に聞いておけば、ここまで評価を下げることはなかった。第三者に頼ろうとしたことで、光の逆鱗に触れる格好となった。
「天音さん・・・・・・」
「卑怯な男は大嫌いなの。特にあんたみたいな男は絶対に許せない」
やり方を変えていたら、絶縁されることはなかった。彼にとっては、取り返しのつかない事態になってしまった。
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