第8話 手を握ってしまった(光編)
隆三を遊びに誘ったのは、以前から興味を持っていたため。昨年の九月あたりから、異性として認識するようになっていた。
すぐに声をかけようと思ったけど、行動に移すことはできなかった。隆三は交際している女に夢中で、他の異性のつけいるスキは0。どんなことをしたとしても、うまくいくとは思えなかった。
菊一から想い人が破局したという情報をゲット。手も足も出なかった女性に、千載一遇のチャンスが訪れた。
親しくなるためには、スピードはものすごく重要。連絡交換で入手したアドレスに、遊びに行こうというラインを送った。隆三は断るかと思ったけど、あっさりとOKしてくれた。時期尚早といわれるだろうけど、恋人になるシチュエーションが浮かんだ。
隆三は待ち合わせ場所に、15分も遅れてやってきた。光は30分前にやってきていたため、45分も待つ羽目になった。
本心は怒りたいところだったけど、心の広い一面を見せることにした。好感度アップさせることで、ものごとを有利に進める狙いがあった。
それなりにうまくいったと思っていた矢先、大きなミスを犯してしまった。相手のことも考えずに、手を握ってしまったのである。あれをしたことによって、評価をガタ落ちさせてなければいいけど。たった一度の失敗で、とりかえしのつかない事態になることもありえる。
光はラインで、手をつないだことを謝罪する。効果はほとんどないとわかっていても、胸の内にある思いだけは伝えたかった。
隆三からラインが返ってきた。
「僕は気にしていないから・・・・・・」
場を取り繕うためだけの、形式的な表現。光は内容を読んで、より不安は増すこととなった。本心を覗ける機会があるなら、心の中を盗み見したい。
一人で落ち込んでいると、倉野美香から連絡を受け取る。
「隆三君を遊びに誘ってみるつもりなんだ。天音さんには絶対に負けないからね」
美香が遊びに誘うと知り、心の中で猛烈な焦りを感じる。
「破局したばっかりだから、そっとしてあげたほうがいいと思うよ」
というラインを送ろうとするも、すんでのところでストップする。二人きりでいるところを流されたら、信用は大きく下がる。
隆三の悪い噂を流すのは、さらにタブーといえる。一時的には効果を得られても、最終的には地獄に堕ちていく。
「うまくいくかはわからないけど、声をかけてみたらいいんじゃない」
「そうだね。やってみる(#^.^#)」
美香の満面の笑みからは、すさまじいやる気を感じられる。心の中において、ライバルには絶対に負けられないという思いが芽生えた。
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