第3話 二人の女の子と連絡交換

 沙月と破局してから、一週間が経過した。


 破局の傷をずるずると引きずるかなと思っていたけど、現実は完全に逆だった。沙月から解放されたことで、人生は劇的に楽しいと思えるようになった。交際していた女は、疫病神もしくは死神だったのを理解した。


 隆三のところに、菊一を含む三人の男子、二人の女子がやってきた。男子は名前と顔をしっかりと憶えているけど。女子はうっすらと憶えている程度である。接点も少なかったので、やむを得ない。


「おはよう」


「おはよう」


 沙月と破局してから、いろいろな男女に声をかけられるようになった。一人の女と別れただけで、学校生活はこんなにも変わるものなのかなと思った。

 

「みんな、おはよう」


 天音光は一枚の紙を差し出す。書かれている内容を確認すると、彼女のラインのアドレスが書かれていた。


「七瀬君、連絡交換をしてみようよ」


「僕と連絡交換をしてもいいの?」


「あくまで友達としてだからね。変な気を起こしたら、すぐにブロックするかもしれないよ」


 彼女と破局したばかりとあって、新しい女を求めているのか。その答えについては、すぐに導き出せそうになかった。


 隆三のところに、倉野美香がやってきた。


「隆三君、連絡交換しようよ」


 隆三は自分を指さす。


「僕と・・・・・・」


「うん、連絡交換をしよう」


「OK・・・・・・」


 美香ははにかんだ笑顔を見せる。隆三はどのような意図を持っているのか、さっぱりわからなかった。


「ラインをちょくちょく送るから、気の利いたときに返事をしてね」

 

「わかった」 


 倉野美香は用事を終えると、6人のところからいなくなった。


 菊一は右手を、隆三の右肩にのせた。


「お前が正常に戻ってよかった。あんな女とずっとそばにいたら、人生はめちゃくちゃにされちゃうぞ」


 小林英彦は大きく頷いた。


「人間で大事なのは中身だ。見た目だけで判断していたら、痛い目に遭うことになるからな」


 英彦は高卒で相撲界入りを目指しているらしく、相撲部で精進している。


 相撲部に所属しているのに、体型はガリガリ。隆三が勝負しても、勝てるのではなかろうか。


「隆三の破局祝いとして、みんなでおごってやらないか」


 菊一の提案に、四人の男女は賛成した。


「そうだね。甘いものを食べて、元気になれるといいね」


 一人の女を失ったけど、五人の仲間を手に入れることができた。これからの学校生活は、うんと楽しくなるような予感がした。

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