第4話 あたしがもう一度交際してあげる(沙月視点)

 冴えない男と破局してから、10日間が経過した。


 沙月は本命にアタックするも、瞬殺されてしまった。断った相手は、自分のことは眼中になかった。学校一の美人、IQを誇る女に、何の不満を持っているというのか。私よりも優れた女は、世界を探してもいない。


 交際相手がいないというのは、沙月にとっては許されない状況。食いつきそうな男を早く見つけて、ぼっちの状況を打開したい。


 沙月は適当な男を見つけて、声をかけることにした。


「あの・・・・・・」


 男子生徒は顔を見た直後、全速力で逃げていく。声をかけただけで、逃げるなんてとんでもない奴だ。


 沙月の視界の先に、隆三の姿があった。すぐに近づくと、上から目線でいった。


「七瀬君、寂しいでしょう。もう一度交際してあげようか」


 隆三は感動の涙を流したあと、もう一度お願いしますというはず。私のぼっちはすぐに解消され、彼氏持ちという称号を入手できる。


 お目当ての男ができたときは、すぐに破局を告げる。新しい彼氏を作るまでの、保険扱いである。


「速水さん、結構です」


 ちょっと前は慰留しようとしていたのに、今回はやけにあっさりとしている。短期間で大きな変化があったというのか。


「私が付き合ってあげるといってんだけど・・・・・・・」


 隆三は顔すら合わせなかった。


「いらないよ。君と破局してからというもの、人生はすごく充実しているんだ。それを捨ててまで、交際するメリットはないと教えられた。別れてくれて、本当にありがとうございました」


 エリートの私を疫病神扱いするなんて。屈辱ではあるものの、歯をくいしばって耐えることにした。


 隆三のいるところに、男三人、女二人が近づいてくる。ガールフレンドの影もなかった男に、新しい女友達ができていたとは。


「隆三、ゲームセンターに行こうぜ」


「菊一、すぐにいく」


 こちらを一瞥することなく、五人の輪に加わっていく。沙月はその様子を、黙ってみていることしかできなかった。


 沙月は他の男に声をかけるも、こちらにも逃げられる。最初はあんなにちやほやしていたのは、どこにいってしまったのか。


 今日はどんなに動いたとしても、収穫を得られる見込みは低い。まっすぐに家に帰ろうかなと思った。

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