第13話 夢かまぼろし
とりのさえずりが聞こえる。
食む。
食みに来る。
オレンジ、むらさき、みずいろに。
あかや、みどりや、きんにぎん。
いろとりどりの花をつけては、いろとりどりの実をつけた樹に。
枝にとがった足をかけ、これまたとがったくちばしで。
ぴいぴい、きいきい、さえずりながら。
必死に必死につけた実を、醜い傷痕でめちゃくちゃに潰していくの。
とりはとってもずるがしこい。
樹が逃げられないのをいいことに、ピーチクパーチク、つつき放題、盗み放題。
食べた後の実など目にも留めず、腐りきった実がぐしゃりと落ちる。
樹はとりのために実をつけたのではないのに。
いつか腐った実に埋もれてしまって、樹そのものが腐り落ちる。
はじめからなにもなかったみたいに、さいごは土くれだけがそこにいる。
だからわたしは、とりがきらい。
この星でいちばん、とりがきらい。
とんでいけ、とんでいけ。
樹に目もくれず、実にくちばしの届かない宙の彼方まで。
とんでいけ、とんでいけ。
どうか樹に触れないで。
どうかわたしに触れないで。
呪いに似た願いで目が覚めた気がした。
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