第48話 やはり遠回り
どうやら美園がやめたらフルで入れるとのことで正社員として正社員として採用することになった。すごく助かると思いながらも美園じゃないのかと感じるがいつかそれも慣れなくてはいけない。
美園の薬指には指輪が輝いていた。婚約指輪だ。普段アクセサリーなんてつけていない彼女が、と思いながらも彼女も現実を受け止めているのかも知れない。
自分も早く……と思いながらも店内に入ると常連のお客さんや新規のお客さんもたくさん入っている。
すると
『今日休みだよね』
「うん、そうだよ。朝言ったじゃん」
『そうだったなぁー。じゃあ今から車そっちにつけるからドライブしようよ』
「うん」
と行ったそばから店の前に分二の車が止まった。常連客やスタッフに声をかけてから店を出て分二の車に乗った。
「少し髪の毛すっきりしたね。確か大輝の所に行ったんだっけ」
「それは覚えているんだ」
「ん?」
分二は少し惚けた感じであった。
「大輝さんとこ、人員減っちゃうけど大丈夫かね。カラーはカヨさんが主体だったじゃん」
「まぁなんとかなるとか言ってたけど」
「そこまで心配してなさそうだね、前の職場なのに」
「大輝ならなんとかできるさ」
と変わりなく会話をする。分二はどこに向かっているか言わなかったが來はわかった。でも言わずして会話を続ける。
「それにさ、リカにも会ってさー」
「マジで? どこで」
「美容師になるって。前の学校で学び直しているらしい」
「いつかは採用しようか……って冗談だけどさ」
「冗談もよしてくれよ」
「前の女をそばに置くのは嫌だなぁ」
「前の女……まだそこ?」
と來は複雑な気持ちになるがもっとその向かっている場所に進むにつれて來は複雑になる。そこは
病院の駐車場でなく近くの提携している駐車場であった。
「……大輝から聞いたんじゃないの。僕と也夜のこと」
分二の口からそれを言われ來は頷く。
「聞いた……也夜から離れるほど何かしたのかい」
「したっていうかね、まだ僕も若かった。彼の気持ちを考えずに彼の心も体も傷つけた」
分二はなぜ病院に来たことを言おうとはまだしない。
「來も嫌だろ……僕のこと」
「なんでそんなこと……」
「本当はセックスが嫌いなんだろ」
確かに、と思いながらもそれが分二からの愛なのだからと來は受け入れていたがやはり嫌だった。
「也夜も嫌いだった……でも僕も嫌いで。也夜がセックス嫌いな理由はわかった」
「……ひどいことしてしまったな、也夜にも來にも」
分二はハンドルに伏せる。
「でもね、分二がすごく僕を愛おしいていう気持ちはわかってるよ。きっと也夜も」
「……來」
「それよりもなんで病院に来たの」
「也夜に会いに……」
「まだ面会はできないよ」
まだ面会は家族のみだ。
「來なら通してもらえるだろ。その時に僕も」
「あわよくば?」
「そんな図々しいことできるわけないか」
來は笑った。
「僕も会えるかわからないよ。家族でもないし」
「……」
何も知らないリカからさっき也夜の家族だと言われていたのに否定する來。
「僕らのこと、來はどうやって也夜に伝えるんだ」
「……それずっと思っている」
「ちゃんと言ったら彼はショックを受けるのだろうか」
「そうなんだよね……」
來は分二の手を握った。
「これからそれをゆっくり考えよう。今は急ぐ時じゃない……」
「ってそれは先延ばしにしているんじゃないか」
「かも知れないね……でもさ、也夜もきっと今……なんで事故にあったのか、昔の恋人に会いに行ったから事故にあっただなんて僕にどう言おうか考えているかも知れないよ」
「そんな馬鹿な……」
分二も手を握り返した。
「……なんで也夜、あの夜に会ってくれようとしたのかな。僕のこと嫌いなのに」
確かにそうである。來も考える。
「多分……会いたくはないほど嫌いではなかったんじゃないかなぁ」
「それだったら嬉しい」
「でも実際にあったら也夜はどうしようとしたのだろう。会うだけ? 話す……ハグ……」
「僕は也夜と一目会うだけでもよかったんだ。君という婚約者がいたのに手を出そうとした浅はかな僕は本当に最低だ」
「そんなに卑下するなよ。そんなことを知った僕なのにまだ分二のそばにいようとしているんだよ」
「……來ぃ」
分二は泣き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます