第38話 嫉妬なんて
「どう? これ全く今と違うよね」
「うん……でも会った頃みたいに後ろ髪伸ばしてる」
少しホストみたい、と言いそうになった
もっと奥の方から
「これはもっと前かな。5年アイドルやってて。もともと研究生からトップスリーになったから後半年、一年やってたらセンターになれたと思うんだけどね、彼はソロ活動が向いてたっぽい」
「そんなに長く……いつから?」
「確か中学生の時に彼はスカウトされて21才で留学するまでやってたんだよね。研究生として芸能活動してたけどそこまで売れるほどでもなかったらしい」
何でこんなにも也夜のことを詳しいんだろうか、と來は思いながらも分二の口から次々と也夜の思い出が溢れ出てくる。
自分の知らない也夜を知っている……なんだか悔しいというか、でももっと知りたいという欲もある。
なかなかアイドル時代の時のことを來にら話してはくれなかったと。
話を聞くだけで機嫌を悪くされたがどう考えてもこのアイドル時代のグッズを見るとそうでもないがその写真の裏側には闇が潜んでいる、清流ガールズNeoの時みたいに。
他にもCDやアルバムも出す分二。來は也夜が不機嫌になる程話したくなかったアイドルの時の彼を知ることが申し訳ないと思いながらもやはり知りたい衝動に駆り立てられる。
「歌も歌っててね。ソロも一つ出してる。聞くかい?」
「いや、いいよ」
「また今度聞かせてあげるよ」
ネットにもCDを出したことがあるとは書いてはあったのだが廃盤だと。これは貴重では? と思いつつもフリマアプリで数点売られているのは知っていた。
モデルの也夜は一切CDを出していない。
「也夜はカラオケでは全く歌わなかったんだ」
「下手すぎるほどではなかったけどなぁ」
「どっちかと言えば僕の方が下手すぎる」
「確かにね、來は地声で歌うから。也夜は声が変わる」
声が切り替わる……也夜は普段の声、モデルの時の声と話し方や声色が違う時があったと思い出す。來は一度聞いたことがあったが切り替えていると言っていたというのを。
そしてもう一つ声色が変わる時があった。それはベッドの上の時だ。ベッド以外でもだがそういう雰囲気になって來をいじめる時の声だ……多分他の人も知らない声色を自分は知っている、少し優位に立った気分の來。
「この様子だと也夜からはアイドル時代のことは聞いてないようだね」
「全く」
「そうか、君には話さなかったのか」
「うん」
分二はアルバムを開いた。來はさらに驚かされる。
分二と也夜がツーショットで写っている写真だった。写真と言っても小さめのインスタント写真。
清流ガールズNeoでも特典として同じように撮影をして、撮影だけで一千円、そこにサインやメッセージをつけるとさらにオプションで値段が上がるのだ。そしてそれを何回も何枚もとファンたちは求めているのだ。
それがアイドルたちの売り上げになる。とても美味しいものである。
だが裏でかったるいとかあいつは気持ち悪いと愚痴をこぼしたり具合悪くなって横になっているのを來は見ていたからそうでもないかと。
それにしてもすごい数であった。最初から見ると也夜の顔はあまり表情はなかったのだがだんだん距離も近くなり顔を近づけている写真も増えてきた。
「まぁ当時男のファンって少なかったし目立ってたかもしれないけど分け隔てなく也夜は接してくれた。アイドルとしての営業的なものではなくなった、次第に」
來は色々と見る。こんな表情をするのかと。悔しくなる……。
「嫉妬してるかな」
「嫉妬って……過去だしさぁ。僕はこの時の彼だったら僕は好きになれたのだろうか」
そう言う來に分二は笑った。
「何笑ってんだよ」
「……僕は本当にこの時は也夜のこと本当に愛していた……」
「えっ」
也夜を愛していた、その言葉に來はつい見てしまう。
「……ああ。僕らは愛し合ってたんだよ」
「……」
分二の微笑みはどういうことかと。
「付き合ってたんだ、僕ら」
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