第六章 開店
第29話 はじまり
それはジェンダーレスなヘアスタイルを提案する美容院、女装男装などのアドバイスもしたりメイクの得意な來はメイクだけもやったりする。
ジュリのセンスは來にも何故かしっくり来て2回目の打ち合わせでの出来た設計書を見たら自分の理想に近かったのだ。
少しクセのある態度のジュリだが來にとっては初めて出会うゲイのタイプで刺激的であった。
男性なのに男性目線だけでなく女性目線もわかる貴重な人間で來には気づかないこともズバズバと言われた。
「仕事とかなにか相談したい時にはいいかもだけど普段から一緒は無理だな……」
「そうだね……すごくエネルギー強いからジュリさんのパートナーもすっごい人だろうね」
と自宅に帰った來と分二は來の作ったビーフシチューを食べる。
もう2人はすっかり恋人同士になった。ビジネスパートナーでもあり、恋人。特に隠すこともなく出かける時や美容の展示会などは2人常に一緒に行き時に手を繋いで共に歩いて出会う人には恋人であるとは公言はしないがもう周りは2人がそういった中であることはもう周知されていた。
店のデザインも従業員も來を合わせて6人。場合によっては他の店舗からも応援に来てくれるし2人ほど結婚して子育て中の女性スタッフ2人は午前から夕方前になるし結構人数的にもカツカツなのだが來が以前応援に行った際に出会った凄腕スタイリストも2名引き抜き1人は美容専門学校から出たばかりの主席卒業したコスプレが得意の男性を採用した。
全員多様な性に関しては理解はあるが同性愛者ではなく異性愛者であるものを採用したのである。その辺りは人間関係で色々ゴタゴタを経験した來ならではあるのだが。
「6人で回していくの大変じゃない?」
「なんとかやっていけるよ……」
「僕は経理とかできるし税理士さんとかと繋げたりすることはできる。デザインやサイトに関してはジュリさんの会社がやってくれるとして……やっぱしんどいよ。ママさん従業員も土日祝とか病欠した時は困るだろ」
「誰だって病気になったり家族や大切な人との時間を優先することはあるよ。ママさん達だけそういう目ではいけないよ」
「優しいなぁ、來」
「まぁ、表向きはね」
ビーフシチューも食べ終えて來は流しに皿を持っていく。
すっかり分二は來の部屋に住み着いてリラックスしてソファーに足をダランとさせる。來は食器を水で軽く流して食洗機に入れ込む。
「受付を置くのもいいかと思うんだが……なんだったら僕がするけどそう頻繁に出られないから1人雇うか?」
「……大丈夫だよ。分二さんも自分の仕事もあるだろ。本当に大変な時には出てもらえるのは嬉しいけど」
「そうか」
食器を片付け終わった來は分二の横に行き身体を重ねる。ここ最近はずっと美容の仕事よりも新店舗のために運営や経営の話ばかりで手先が鈍ってたりピリピリした雰囲気の場面が多く神経を張り巡らしていた。
「おいでおいで、來」
「分二さん」
來は甘える。そのほうがやっぱり自分の性格上合うのだ、と。心もほぐれる……癒しの存在になっていたのだ。
すると分二は來と目を合わせて微笑んだ。
「風呂一緒に入るか?」
「うん!」
子供のように無邪気に答える來。それもまた分二にとっては愛おしくてたまらないのかぎゅーっと來を抱き締める。
風呂場では來が分二の体を洗う、髪の毛もだ。
「來、気持ち良すぎるよ……我慢できない」
「我慢してください」
「いいから……」
「はい」
今までにはなかった俺様要素が強めな分二に來は服従する。
ベッドの上でもだ。分二の気がすむまで來の意志に反して行為をする。正直、來は困ったのだがもう今ではそれが分二なのだ、これが自分への愛し方なのだと思い彼に委ねている。
「僕がどれだけ來のことが好きかわかるだろ?」
「はい……」
「可愛いねぇ、來」
分二は他にも仕事があるためその時は來は1人寂しくなる。いつもはやかましいほど賑やかで夜も存分に愛してくれる彼がいないからだ。もう完全に中毒になっていた。
『お久しぶり、來。ちょっと相談があるの』
とこんなタイミングで
もうリカとの交際の件で幻滅されたかとは思っていたのだが、なぜ連絡しにきたのだろうかとメールを読み進めていた。
『來のお店で雇ってほしい』
美容師の免許もないし美容の仕事ではないはずだったが、と來は返信した。就活生の美園は思った以上に苦戦を強いられていたようだ。父親からのグループ会社の就職も全て蹴ったらしい。
それが仇になったのか就活が遅かったからなのか応募した企業が全部不採用だったらしい。先日分二と受付を雇ったほうがいいのではという話が出たばかりだ、と思ったのだが美園が近くにいると忘れたい
それと來が今分二と付き合っているということで美園にどう思われてしまうのだろうか、複雑な気持ちになってしまった。
『ダメならいいわ。話聞いてくれてありがとう』
美園は兄が芸能界に行ってしまったことで自分に過大なプレッシャーを背負わされ父の意見のまま親のレールに乗って関連会社に入って恋愛結婚とは裏腹に政略結婚させられてしまうのだろう。
以前アルバイトを親に内緒で2年ほどファーストフード店でしていたがバレて半年学校以外は外出してはいけないと言われてしまったということを也夜含めた3人でご飯を食べた時に聞いたことがあったのだ。
來はメールの画面を閉じて電話をかけた。
「もしもし、美園さん……」
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