第一章 幸せから堕落へ
第1話 幸せの絶頂
二人が結婚式を迎える日の前日。
明日の予報は晴れ。雨男な
「てるてる坊主吊るそうと思ったけど大丈夫みたいだね」
「子供みたいなことしないでよ、
「なるほど。晴れ男VS雨男、比率が晴れ男の方が多かった……すごいことだ」
と二人笑い合う。出席者はほとんど男ばかりだ。
同性婚、仲間内の結婚式というものもあってのことだが互いの親戚は報告のみ、両親は顔合わせという食事会のみで終わった。
まだ食事会まで辿り着けたのも良い方だと來は思っている。
それ以降、両親とは会ってもいないし話もしていない來。
來と也夜は挙式会場に行っていた。駅から近い式場でまだ真新しい建物である。
式の前には前撮りも同じ建物の中で済ませたが本当は市内の寺の中庭でする予定が案の定也夜の雨男っぷりが発動してしまったようだ、せっかくいいロケーションなのだが大雨で急遽式場内での撮影になった。
だがそれはそれで様になった、それもこれも也夜は人気モデルであるからだ。
背も180を超え、顔の造り、手足は長くバランス良い。來も180以上、少し痩せ気味なところもあり也夜の横に立つと少し劣る、と感じる。
也夜は王子様タイプ。
しかし來はそうでない、一緒にいるからわかることだ。
しかし見た目は王子様な也夜は普段は天然で少しおっちょこちょいでビビり。女性との交際経験がなく、少し苦手。気取っているのはそれらを隠すため。
也夜は気を許した相手にしか見せないその姿。それを知ってるからこそ、來はそのギャップにも惹かれてしまうのだ。
でもやはり見た目のオーラもただものでもない。
來はそんな也夜が羨ましく、でも愛おしい。もう誰にも渡したくない、離れたくない……それを確約できるのはついに明日だと。
「では、この通りで……明日が楽しみです」
「はい、僕らも楽しみです」
式の最終確認をしてプランナーの女性からも楽しみにしていますと言われ気持ちが昂る。
プランナーだけでなく式場も同性婚の結婚にも理解があり、上っ面なものでなく真摯に全力でさまざまな提案をしてもら実現に至った。
2人はセッティングされた式場、装飾を前に胸がいっぱいになる。
生活のことを考えると、特に貧しいわけでは無いが、そこまでお金もかけたくはなかった。
也夜の家族が出席できない代わりにと今までお世話になった人、これからお世話になる人に向け、そして自分の息子のためにと装飾や食事やおもてなしのためにとお金を出してくれたようだ。
2人の周りの人たちも温かった。友人も職場の人たちも。
だからこそこの幸せで晴れの日を迎える準備が出来たのだ。
日本では残念ながら同棲同士の結婚、入籍は出来ないのだがパートナーシップ協定というものが制定されている地域では同棲同士パートナーとし一緒になることはできる。
今まで住んでいる場所ではそれはできなかった。わざわざ制定されている隣の市だが引っ越しをした。
知らない街で、職場からも少し遠くはなったのだが2人でなら大丈夫。そう思っていた。
引っ越しも終えている。駅近のマンション。也夜の親戚のマンションで少し値下げしてもらえた。お祝いもあるだろうが也夜は今後海外にも仕事を増やして仕事も増えるだろうし、來も今は本人はその気はさらさらないのだが美容師として今後独立もするだろうという試算も考えれば大丈夫だろう、若い二人だが入居できたのも周りからの支援もあってのことだ。
にしても飛んだ博打でもあるが、なんとかなるなる、と也夜はビビリな割には変なところでポジティブになるから年下の來からしたらそこがちょっと心配なのだが、
大丈夫か、とようやく思えるようになったのはついここ最近であることは内緒である。
明日、式を終えて役所に行ってそのあと本格的に住み始める。二人で暮らす分には充分である。
特に子どもを持つわけでもない、男二人暮らし。也夜も來も仕事はそこそこある。
それに今までも互いの部屋を行ったり来たりしていた。泊まりも何日かしてたこともあり互いの性格や生活様式もわかっている。
そこまで広くないから掃除もそこまで苦労しないだろうし料理も互いにそこそこできるからとキッチンも重視したおかげで広めのキッチン、これから料理が楽しみである。
いや、もちろんすべてのことが。來はもう幸せに満ち溢れていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます