(第8回富士見ノベル大賞)君のことを忘れたいから少し遠回りしてみた

麻木香豆

プロローグ

 らいはこの日が、最大の幸せな日だと確信していた。


 生まれてこの方、生きづらさをずっと感じていた。それはのちに少しずつ明らかになるとして。


 彼にとって素敵な出会いがあっだおかげで光が差して來は生きていこう、闇の中から抜け出そう、そんな気分になれたのだ。


 カレンダーにも丸をつけて、この日をいかにどれだけ楽しみにしていたことか。

 互いに来月だね、来週だね、明日だね。そんなことを言っていたのに。



「なのに……」


 一緒にその日を待ち侘び、最大の幸せな日を迎えるはずの相手がベッドの上で横たわっているのだ。ただ横たわっているのでは無い。

 呼吸器をつけ、多くの装置に繋がれている。


「どうして」


 と來が思ってもどうにもならなかった。




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