第2話
♦︎少年が天使を倒す少し前♦︎
「人間ども〜働いてるか〜お前ら家畜が生み出す命のエネルギーを私たちが搾取してやってるんだからありがたく思え〜」
倒壊したビル、機能していない電柱、雑草は青々と生い茂りそこには荒廃した世界が広がっている。その中で一際目を引くものはこの場に不釣り合いな最新鋭のトレーニングマシンが広場の中央に設置され、それを必死に使っている人間と高い位置からそれを見下ろす白い翼を持った美しい少女。
「おい〜そこぉ〜供給量が落ちてる!怒られるの私なんだから勘弁してくれ〜」
「もうそいつは無理だ!休ませてやってくれ!代わりに俺がやる!」
「おい人間?何故家畜如きが私に口を聞いてるんだ?」
口調と同時に気だるそうな雰囲気も消え失せ冷え切った目で少年を睨みつける天使。
「そのままじゃ死んじまうだろ!」
「貴様らがいくら死のうと代わりはいる。人間の総量は我々天使が調整しているんだ。安心しろ」
「てめぇ……」
「私に殺気を向けたか?人間にしては良い度胸だ。どれ、可愛がってやるからこちらへ来い」
「うわっ!」
天使が手招きをすると少年の身体が宙を舞い天使の足元へと引き寄せられる。
「おや?貴様の顔には見覚えがあるな。名前を言ってみろ」
「暁 淘夜だ!」
「アカツキトウヤ?ああ!数年前に殺した夫婦の子供か!すっかり忘れていたぞ!あの夫婦は実に殺し甲斐があった!互いに互いを庇い、最後まで生きることを諦めなかった!そうか、最後に叫んでいたトウヤとは貴様の事か!」
「お前が父さんと母さんを……」
「丁度良い。両親に会わせてやろう。そこで貴様への罰を与える。私は優しいからな!転移!!」
少年の視界が一瞬で切り替わる。そこはどこかの崖下の様で汚染された空気と死体、人骨の数々が広がっていた。
「ここは人間廃棄場。ほら?あそこに並んでるのがお前の両親だ。慈悲深い私は覚えていてやったぞ!」
「父さん……母さん……こんなところで寂しかったろ?」
「ハッ!!」
天使は突如として拳を振り下ろした。
「え…………」
その先にあったのは粉々になった淘夜の両親の遺骨。
「アハハハハ!これは面白いな貴様のその表情!後もう一つ教えてやる。人骨が綺麗な状態なら天使の技術で蘇生もできた!だがこうなってはいかに我々でも厳しいな。すまない!」
「あ、ァァァァァッ!?」
糸が切れた様に動かなくなる淘夜。天使はそこに近づくと。
「おい!返事をしろ!心が壊れては面白くない!頼むから返事をしてくれ!」
そう言いながら天使は淘夜の腕を千切り、足を捻り、身体中を殴った。だがそのどれにも淘夜は反応を見せずただ虚空を見つめていた。
「これはもうダメか……はぁ、しょうがない。私がやり過ぎたな。今回は諦めよう、転移」
「父さん……母さん……あれ?誰だっけそれ……」
この日から少年は両親に関する記憶を無くし、そこには天使への憎悪だけが残った。
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