第17話 格の違いを見せてやる
ミーシィーは賢い。
魔法による攻撃は意味がないことを悟り、すぐに配下のアンデッドによる近接戦へと移行してきた。
まるで津波のようにアンデッドが次々襲いかかってくるけど、これも問題ない。
双剣を休まず振り続けることで、アンデッドの体を切り刻んでいく。
刀身には【エンチャント・ヘルブレイズ】を付与してある。魔力でしか消すことのできない漆黒の炎が切断面からアンデッドを焼き尽くすだろう。
アンデッドと私の戦いを見てミーシィーが爪を噛んでいる。
「人間が闇の魔力を使うなんて……いや、でもこの恐ろしくも美しい魔力の波長は……」
(ようやく気づいたかな? 私が魔王だってこと)
あのルーヴェルって魔人は、私が魔王だと気づいた瞬間に降伏するような様子を見せた。
さて、このミーシィーはどういった動きに出るだろうか。
「第八階級魔法の【デス・デス・デス】は跳ね返された……階級魔法が効かない……? なら……」
ミーシィーが懐に手を差し込む。
何をするつもりなのか分からず、注意深く様子を見ていると、黒い水晶が取り出された。
水晶に亀裂が生じ、途端に嫌な予感がする。
「これは……超次元魔法の反応!?」
「魔王様より賜りし魔水晶の力を今ここに。この一撃で死になさい! 超次元魔法……“
階級魔法の上に位置する超次元魔法は、さすがの私も跳ね返すことはできない。
咄嗟に回避……あぁいやする必要なかった。よく考えたらそうだ。
魔力で顕現したいくつもの骸骨が私の周囲で叫ぶけど、うるさいな~、程度で全然影響はない。
この叫びを聞いた者をあらゆる魔法的防御を無視して即死させるのがあいつが使った魔法だけど、そもそも即死に対する完全耐性を持っている私には意味がないんだよね。
これは想定外だったみたいで、ミーシィーは目をひん剥いて口をパクパクさせていた。
「うそ……でしょ……超次元魔法が効かないなんて……」
他の超次元魔法だったらきっと大ダメージを受けていた。相性が最悪だったね。
さて。これで戦意喪失してくれたかな。
ルーシーは勢い余ってすぐに殺しちゃったけど、この子は生かしてあげてもいいと思う自分もどこかにいた。
「私には勝てない。さっさと尻尾巻いて逃げたら?」
その綺麗な黒い尻尾を巻いて、ね。
これ言ったら種族によってはぶん殴られるそうだけど、勝者だから言っていいと思う。
「逃げる……? 冗談。私が勝てないなら挟撃できるまで待つだけ」
「挟撃?」
背後から攻撃を? アンデッドが回り込んでいるなら魔力で気づく。
何を言って……。
「メランコリー!」
砦の向こうから大きな声が聞こえた。
ヴェイルの声だ。でも、普段と違って涙をにじませる悲痛なもののように聞こえる。
「ここにいますかメランコリー!? 町に魔人が! アイリス様が!」
なっ!? 町に魔人!?
慌ててミーシィーを見ると、これ以上ないくらいに勝ち誇った笑みを見せていた。
「ゴードウィンがやったのね。二人がかりならお前も殺せるはず……!」
こいつら……仲間を町に!
(あの女の子か! しまった!)
一瞬だけ助けた女の子から偽装に関する魔法を感じ取ったけど、すぐに魔人が来たから無視してしまった。
あの子がきっとゴードウィンとか言う魔人が化けていた姿だったのだろう。
町に魔人を送り込むなどととんでもないことをしてしまったのは私だ。責任は取らなくてはならない。
「お願い! アイリス様を助けて!」
「行かせない。ここで足止めさせてもらう」
「生かしてあげようと思ったけど、話が変わった。一撃で終わらせるね」
前進の魔力を膨れ上がらせ、いくつもの魔法陣を重ねて巨大な赤黒い一つの魔法陣を形成する。
「死にたくないなら逃げなさい。後ろの兵士さんたちも絶対にこっちを見ないで!」
「はっ! 何をするつも……」
「超次元魔法! “
私が放つことができる最大威力の攻撃。
黒紫の光線は数千億度の熱量を伴い進行上に存在するありとあらゆるものを焼却し、この世界から消し去ってしまう。兵士さんたちに見るなと警告したのは、光量で視神経が潰され、眼球付近の血液や水分が一瞬で蒸発して最悪死に至るかもしれないから。
一直線に飛んだ光線は、瞬時にミーシィーを消滅させ、アンデッドの大群を根こそぎ消し去り、大河の水を蒸発させた。
効果範囲外から水が流れ込み、いくつもの渦潮が生み出される。
とりあえず目の前の敵は一掃した。急いで町に戻らないと。
腰を抜かした兵士さんたちの頭上を飛行魔法で飛び越え、砦の向こうにいたヴェイルと合流する。
「メランコリー!」
「転移で町に戻る! 掴まって!」
「はい!」
お願いアイリス! 無事でいて!
祈る気持ちを胸に、転移魔法で急いで町へと飛んだ。
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