第8話 階段:ぶつかる
アラームが鳴って出動。
まったく、アラームが鳴る頃には、
たいてい終わった後なんだよな。
あの男も、わかっててやってるんだろう。
俺は、とある男を監視している。
うーん。ちょっと語弊があるけれど。
その男は、他者の能力を覚醒させる術を持っている。
薬を使うわけでなく、
なんというかな、リミットをはずさせることが出来る。
それは人によって様々で、
運動能力だったりするし、視覚のリミットが外れるのもいる。
まぁ、そういう男だから、
それなりに狙われもするし、監視もされる。
俺はちょっと上のほうから、見張っていてくれと依頼されたので、
まぁ、こうして階段上ってあの男の部屋に行こうとしているところだ。
あの男は自分の術も、能力を覚醒させることも、楽しんでいる。
厄介なことだと思う。
俺の持論だけど、人は壁にぶつかって、
それで強くなったり知恵がついたりするもんだ。
壁にぶつかる前に能力覚醒させたら、
どうなってしまうんだろうと。
朱鷺色の和服を好むその男は、
子供からヒーローにしてくれる、
お師匠様と言うことになっているらしい。
漫画ならそうだろうな、
けど、それで本当にいいのかと俺は思う。
例えば。
黒い学生服のそこの少年が、
怪我をしてまで何かと戦ったこととか。
俺はそういう不器用さが好きなんだと思う。
栗色の髪の女性がうつむいて降りてくる。
朱鷺色のあいつの彼女じゃなかったか。
何かあったか。
白いワンピースの少女が駆け下りてきた。
二人とも朱鷺色のあいつが好む香の匂いがする。
…アラームの元凶か?
とにかく、現場に行かないとと思うと、
今度はおっかない顔の男にぶつかる。
やれやれ。
さらに、青いジャンパースカートの女の子がつまづいて、
持っていた、たくさんの空き缶を、ばら撒くはめになる。
俺はそのときに見た。
あいつに覚醒されたであろう黄色いシャツの少年を。
空き缶の上を渡っていった。
まったく、どいつもこいつもだ。
俺は空き缶をひとつ、飛んでくるのを無造作にキャッチ。
女の子に返して、また、走り出す。
俺はぶつかって得るものは、何物にもかえがたいと思ってるんだ。
ぶつかった苦しさも痛みも、全部自分のものだからな。
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