第弍章 釣乙女等の〈ま〉界召喚
第拾玖話 フィッシング・オフライン
一月から三月にかけて、日本の各地で幾つかの大きな釣具の祭典が催される。
三月の九日と十日に、名古屋の金城ふ頭に在る名古屋市国際展示場、「ポートメッセなごや」で開催されるのが、中部地区〈最大級〉のルアーフィッシング・フェスティバルである「ザ・キープキャスト」で、入場には、一般は、当日二〇〇〇円(前売りは一六〇〇円)かかるのだが、高校生以下は入場無料である。
そして、名古屋の催しに先立つ一か月前の二月の三日から四日にかけて、大阪の大阪南港コスモスクエアに在る日本最大級の国際見本市会場、「インテックス大阪」で催されるのが、「フィッシングショーOSAKA」で、一般当日入場券は二〇〇〇円(前売りは一六〇〇円)で、こちらは、入場無料になるのは中学生以下になっている。
さらに、大阪のイヴェントの半月前の、一月十九日から二十一日までの三日間、横浜のみなとみらいに在る「パシフィコ横浜」で催されるのが、「釣りフェスティバル」で、土日の一般当日入場券は二〇〇〇円(前売りは一六〇〇円)で、高校生以下の入場は無料だ。
「釣り道具のイヴェントって、三学期の真っ最中に行われるのよね。それって、この時期が、基本、釣りのシーズン・オフだからなのかしら? 知らんけど」
令和六年の最初に開催される三つの釣具の祭典の基本情報を見比べながら、濱辺七海(はまべ・ななみ)は、父の書斎で、こう独り言を続けた。
「とはいえども、中三のわたしに行けるのは、金銭的にも、せいぜい横浜のイヴェだけなんだけどさ。それにしても、高校生以下は入場がタダって、オコズカイに限りがある中高生にとっては、本当に〈神イヴェ〉よね」
それから、七海は、父のパソコンの大きなディスプレイで、横浜の釣りイヴェントに出展するメーカーの情報を検索しながら、ネットに繋がっていない〈オフライン〉でも、自分のタブレットで記事が読めるように、片っ端からWebページを保存していった。
七海が住む〈門前仲町駅〉から、パシフィコ横浜最寄りの〈みなとみらい駅〉までは、最も安い方法で行こうとした場合、片道七一一円、乗り換え回数は四回で、そして、移動には約一時間半の時間を要する。
往復三時間近くの移動の間は、釣りフェスティバルで巡る企業の記事を読んで過ごし、会場では、タブレット片手にブースを巡りたい、と考えていた七海の気がかりは、スマホやタブレットといった携帯端末の速度制限であった。
この事を、塾の冬期講習の食事休憩の際に語っていたところ、クラスメートの太田が、オフラインで記事を読むための方法を七海に教えてくれた。
それまで七海は知らなかったのだが、閲覧しているページを、後にオフラインで読むには、まず、ギアマークの『設定』を開いて、ネット閲覧アプリの「Safari」を選択し、一番底の方にある「リーディングリスト」の「自動的にオフライン用に保存」のタブを緑色の状態にすれば、それで準備完了で、あとは、Webページのアクセス中に、ページ右上のダウンロードアイコン内の眼鏡印をタップし、「リーディングリストに追加」するだけで事足りたのだ。
七海は、どうして、「リーディングリスト」と「ブックマーク」といった似た機能がブラウザにあるのか、と以前から疑問に思っていたのだが、要するに、閲覧した事があるページにオンラインでアクセスする目的でURLを記録しておくのが〈ブクマ〉で、オフライン用の保存が〈リーディング〉なのだ。
試しに、一度やってみたところ、驚くほどに簡単で、この方法を知ってから連日、七海は、塾から戻ると就寝までの間、釣り具メーカーページへのアクセスからのリーディングリストへの追加という作業をひたすら繰り返し続けていた。
また、この時、七海は、保存していた動画をオフラインで視聴する方法も覚えて、様々な動画視聴サイトの釣り動画も、保存可能の上限いっぱいまでダウンロードしたのであった。
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