第7話 17億円当てた男 前編
エル氏は日比谷のハズレの寂れた宝くじ売り場でロト7を2口買った。
特に宝くじの趣味はないのだが、路肩に駐車していた何台かの車のナンバーがなぜか頭に焼き付いたその先に「一粒万倍日」の旗が目に入ったからだ。
さっきの車のナンバーを鉛筆でマークして600円払う。
売り場の40代くらいのちょっと美人の女性は「大きく当たりますように」とにこりとくじを渡してくれた。
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エル氏はパッとしない外見に温厚でのんびりした性格でそこそこの会社でそこそこの給与をもらっている。
特に趣味もなくたまに美味しいものを食べるのがささやかな楽しみと言える程度のもので特に「欲」には無縁の生活を送っていた。
さきほどパッとしない外見と言ったが、少し付け足すと貧乏くさいオーラを放っていると言ったほうが正確かも知れぬ。
見なりは不潔ではないが、あまり着る物にもお金をかけずに質素なものを来ているせいかもしれないが。
人付き合いは苦手というほどでもないが、さりとてあまり濃い付き合いはしないほうである。
当然の結末というか、女性にモテるタイプではなく30代に入っても独身であった。
そんなこんなでお金をあまり使うことがないエル氏はさほど高給ではないが自然に口座には1000万円を超える残高が積み上がっていた。
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何ヶ月かしてエル氏は札入れの中にロト7のくじ券が入っていることに気がつく。
おりしも有楽町にいたエル氏はロト7を買った宝くじ売り場に寄り道することにした。
一粒万倍日の旗の立つ売り場に行ってみるとあの寂れていた売り場には行列ができていた。売り場の目立つところに「この売り場から1等8億5000万円が二本出ました。」
と書かれている。
「ああ、そういうことか、並ぶのもめんどくさいな。」
エル氏はその日は寄らずに軽く立ち飲みして家に帰ることにした。
中編に続く
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