第6話 とんでもないやつ2020
はるか昔、グウという後世の人間何千億人をも苦しめることになる都市伝説級の大罪人がいたという。
グウは浜辺で少し綺麗な貝殻を拾い、丸く削ってピカピカに磨いた。
何時間もニヤニヤしながら眺めてその出来栄えを誰かに自慢したくなった。
その日も浜辺に寝転がりながら丸いものを眺めてニヤニヤしていたらびくに入れた魚を持った漁師が通りかかった。
「どうしたんだい、グウ、やけに楽しそうじゃないか。」
グウはちょっとイタズラ心を起こして、
「そりゃそうさ、すごいものを手に入れたんだからな。」
そう言ってグウは丸く削った貝殻を漁師に見せた。
「これは『マネ』と言うんだ、これ一個で魚一匹と交換できるんだよ、どうだい、その魚と交換しておくれよ。」
「そうなのかい?聞いたことがないなあ。」
「何を言ってるんだ、知らないとはとんだ田舎者だな、お前さんが今度はそれを持って農家に行けば米一袋と交換してもらえるんだ、便利だろ。都会ではみんな使ってるぜ。」
もちろん大罪人グウの言葉はデタラメであるが、漁師は流行に乗り遅れまいと魚とマネを交換したのである。
そして言われた通りに今度は農家に行って同じ話をしたところ、本当にマネは米一袋と交換できてしまった。
「グウの言うことは本当だったんだな。」
完全に信用してしまったのである。
その後信用の連鎖によって、マネは通貨となり、現在に至るまで何千億人もの人間を苦しめるmoneyとなったのである。
しかしグウの正体は現在も不明である。
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それから何千年もの時が流れた。
インターネットが普及し、電子取引が普通に行われるようになり世の中はグウの時代とはうって変わった。
エス・エヌ氏はとんでもないことを思いつく。
クラウド上に国に許可なく勝手に仮想のコインをでっちあげたのだ。
ピザ屋の友達に「このコイン2万枚でピザを一枚売ってくれよ。」
「へえ、そのコインでモノが買えるのかい?」
「そうさ、みんなが使えば何でもこのコインで買えるようになるぜ。」
エス・エヌ氏は国に管理されない形でただ、10分ごとにどこでだれが誰にいくら払ったかを誰もが追跡できる仕組みを作り、その仕組み管理をゲームやクイズにして、最初に正解にたどり着いた人にコインをあげるという
仕組みはうまく働き、最初の取引による価値はコイン2万枚でピザ一枚だったのにも関わらず15年余りでコイン1枚600万円の価値(実に1000億倍)を獲得するに至るのだ。
しかしながらその
****
そして新たな都市伝説が始まる。
ただの貝殻が価値を持つならやっぱ「もふもふ」の時代だし「柴犬」の出番だよな。ネタだけど。
こうして「柴犬コイン」が2020年、爆誕したのである。
困ったことに信用創造とはグウの時代と何ら変わり映えしないようなのだ。
※本作は星新一のショートショートと実話を元にしたフィクションです。
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