第10話 撃破!
レイの案に乗ることにしたゼロ。
オズールの剣が向かってくるが…………紙一重で避けた。
そのゼロの動きに驚いたが、休みもなく、剣をたたき付けてくる。
「無駄だ」
先程と同じように全て、紙一重に避ける。
「な、どういうことだ!? さっきと動きが違うじゃないか!!」
「戦闘中に教える馬鹿がいるかよ」
ゼロは隙を見付け、腕一本を一線で切り落とす。
「ぐぁぁぁっ!!」
「あれ、石なのに、痛みがあるのか?」
「畜生がぁぁぁ!!」
腕を切り落とされたが、オズールはまた『物質構成』を使って石の腕を作り出した。
「ハハッ! これなら何回も斬っても無駄だぁぁぁ!! 死ねぇぇぇ!!」
「煩い」
バッサリと切り捨てるゼロ。オズールは続けて攻撃するが、掠りもしない。
「何故だ!?」
何故、ゼロに攻撃が当たらないのか不思議だと思うだろう?
その種は…………
『右左斜め下左上下斜め……』
そういうことだった。
レイが、攻撃を予測し、ゼロに教えていただけなのだ。
では、何故レイがそんなことが出来るのか、スキル? それは違う。
ただ、計算しただけなのだ。
少しの間だけで目視からの情報を集め、オズールの動き、癖、頭の出来までも見抜き、計算しているだけだった。
レイは前の世界では、天才だった。おそらく、前の賢者だった者もそこまでではなかったはず。
三歳で、全ての言語を操り、大学入試レベルの試験も余裕で全科満点を取った。
それだけではないが、言い切れないほどの記録を超越していた。
そのレイが僅かな情報だけで攻撃を予測することなんて、朝飯前なのだ。
一回、腕を切り落としただけでは、『物質構成』で腕を再生してしまう。
ならば…………
「ふぅ、お前は弱いな」
また隙を見付けたゼロは斬るではなく、突き刺した。
「その能力があっただけで、八番目だっただろう」
オズールは剣を突き刺され、ぐぅっ、と小さく悲鳴を漏らすが、それだけで終わらない。
「終わりだ。消えよ、”魔枝剣(パラサイト)”!!」
ゼロが持つ剣の形が変わる。石像族といえ、ただ石より硬い程度だった。
ゼロの剣なら、簡単に斬れるが、いちいち再生してしまうので、纏めて斬ることにした。
そう……、オズールの内部から、突き刺した剣が枝のように分かれ、全ての箇所を破壊し尽くす。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
身体の中でうごめく剣、痛みは凄まじい物だろう。
何故、石なのに痛みがあるのか、わからないが……
「さらばだ、石の剣士よ……」
剣を心臓部である球に傷を付けないように気をつけながら、他の部分をバァン! と吹き飛ばした。
これが人間だったら、臓物がバラバラに降って血濡れになっていただろう。
だが、身体が石でできている石像族は、石と中心になる赤い球だけで血濡れしなく済んだ。
「よし、これを吸収!!」
手に入れた赤い球を吸収したら…………
『……!!……ゲットした……!!』
(よしっ!!)
無事、スキルを吸収することに成功したゼロとレイだった。
これで、人間の身体を作れるようになる。
あとは材料だけだ。
魔王ラディアの第八の配下、オズールはスキルが欲しいの理由だけで、殺された哀れな被害者に成り下がったのだった…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんな戦いを見ていたフォネスは、言葉が出ない程に、衝撃を受けていた。
(倒した……、魔王の部下を……!!)
オズールと言う者は、魔王の配下の中で八番目に強い強者だったのだ。
私の主であるゼロ様はまだゴースト。凄い実力を持っているが、いくらでもオズール相手には勝てないと思っていた。
実際にも、魔素の量では、オズールの方が上だった。
(さっきの動きは何だったの……?)
先程、力で押し負けた時は、やはり、ゼロ様でさえ負けてしまうのか……と思っていたが、急に動きが変わったのだ。
今まで一緒にいて、見たこともないことだったので、驚きで口が塞がらない思いだった。
紙一重に避けるゼロ様を見て、今までは手加減していたのか? と思うほどだった。
しばらくしたら、ついに、決着が着いた。
(まさか、魔素の量で劣るゼロ様が勝ってしまうとは……)
見た目を信じられなくて、何回も目を擦っても結果は変わらなかった。
つまり…………
(や、やった!! ゼロ様が勝ったわ!!)
勝ったと確信できた時、心の中は歓喜でいっぱいだった。
さらに、主であるゼロ様が一つも傷を付けず、生きて私の元に来た時、嬉しさから、涙が出ていた。
そこで、新しい力がゼロ様から流れたような感覚を感じた…………
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
オズールを倒し、スキルも手に入れた。
それだけでも、心が浮つくほどだったが、まだ良いことが残っていた。
それは…………
《魔素量が上限に達しました。幼霊体(ゴースト)から半霊体(ファントム)に進化致します》
進化すると声が流れてきた。
この声、何処から聞こえるのか気になったが、それより…………
(よし! 進化キタァァァァァ!!)
『……おめでとぅ!半霊体(ファントム)、進化があるとはね……』
(お、この感じが進化か……)
『……ええと、姿は変わってないけど、格が上がったような気がする』
(さらに、魔素量も増えたみたいだな)
『……うん、フォネスも尻尾が増えた……』
レイの言う通り、尻尾が三本に増えていた。
フォネスの前まで歩いていったら、急に泣かれて驚いたがな……
あと、フォネスのスキルは一つ増え、魔素量が増えていた。
それで、尻尾が増えただろう。
何故、ゼロが進化して、フォネスまで強くなるのかはわからないが、ゼロとレイは名付けに関係があると考えた。
(先程のスキルも手に入れたし、ステータスを見たら凄いな)
『……うん、オズールでさえ、スキルは二つ、しかなかったね』
オズールは、『物質構成』と『剛力』しかなかった。
その代わり、ゼロのステータスは、レイが使いやすいように統合したため、スキルの数は減ったが、他の奴らよりは多いだろう。
ステータス
名称 ゼロ
種族 半霊体(ファントム)変異種
称号 ”魔王の配下殺し”
スキル
希少スキル『知識者(チシキモノ)』(名称 レイ)
(鑑定・統合・思考空間)
希少スキル『身体構成(ヒトナルモノ)』
(作成・維持・強化)
特殊固有スキル『魂吸者(スイトルモノ)』
(吸収・回復促進)
通常スキル『熱寒耐性』、『物理耐性』、『魔力操作』、『魔力察知』、『隠密』
と言う風になっていた。
(あれ、スキルが大分変わっているな?)
『……うん、説明するね』
(あ! 『精力強化』がない!?)
『……初めはそこなの……?』
レイは呆れるような感じだったが、キチンと説明してくれた。
『精力強化』だが、効果はそのまま、『身体構成(ヒトナルモノ)』に入れてあるようだ。
ゼロは、良かったと安心し、続きを聞かせてもらった。
まず、『身体構成(ヒトナルモノ)』は、人間になるためのスキルに作ってあると。
作成は人間の身体を作り、維持は人間状態での魔素消費を無くせるようだ。
強化は『精力強化』にある強化の部分を身体にも反映出来るようにしたらしい。
これだけでも、凄いな!! と思うが、まだ終わらなかった。
『物理耐性』は、『無痛感』をベースにしてある。
『物質構成』の中には武器に物理耐性を付ける効果があったのでそれを抜きだし、武器にしか効果がなかったのを『無痛感』に組み込んで、身体に物理耐性が付くようにしたのだ。
(マイリトルシスターは天才だ!! 無駄を無くし、自分が使いやすいように統合してくれるとは!!)
『……ふふん♪』
レイは胸を張るような動作をしたかったかも。声しか出せないけどね……
これで、後は材料があれば、人間の街に侵入出来る。ゼロ達は材料を探しに、初心者の森まで戻ったのであった…………
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