第3話 初の人間



 ゼロとレイは、このままゴースト系が出てくる洞窟を攻略し続け、三日が経った…………




(ふむ、ここはゴーストやスケルトンしかいないみたいだな)

『……そうだね』


 洞窟の奥についたのは、体感でしかないが、転生してから5、6時間ぐらいの後だった。

 洞窟の奥だと思える場所には、何もなかったし、ゴーストやスケルトンしか出て来なかったからそうゆうの洞窟だと結論を付けたのだ。

 その後も、強くなるために、無限に出て来ると思えるようなゴーストとスケルトンを休まずに、狩り続けていた。

 いつの間にか、三日は経っていた。




『……三日間、狩り続けても疲れがないなんて、その身体は便利だね』

(そうだな。吸収を使っていてばかりだから、疲れないかもな?)

『……もうゴーストやスケルトンから取れるスキルはないみたいし、吸収を使わないで戦い続けてみる……?』


 ゴーストやスケルトンと戦ってみて、スキル持ちのモンスターは珍しいとわかった。

 今まで戦った数は、レイに聞いてみると、249匹だった。その中、始めのスケルトンと合わせて、たった7匹しかいなかったのだ。

 スケルトンは『魔力操作』で、ゴーストからは『魔力察知』を手に入れることが出来たゼロであった。




『……『魔力操作』で武器を作れるようになったし』

(そうだけど、作ったらその分の魔素は消えちゃうしな……)


 ゼロはレイと一緒に『魔力操作』で武器を作れるか試したら、作れたのだ。だが、作った武器は使うとしばらくして消えてしまう。

 消える前にリサイクルとして、魔素に戻して吸収しようと思ったが、出来なかったのだ。




(制限時間付きだが、魔素を注ぎ込んだ分、威力も充分だったしな)

『……鉄の剣程度なら斬れたしね』


 この前、『魔力操作』で魔素の剣を作った時、剣を持つスケルトンと戦ってみたのだ。




 結果、元からボロボロだった剣ごと、骨も斬れました。

 簡単に斬れるとは思わなかったんだがな……



 その後、しばらくしたら剣は自然霧散してしまったが、威力は充分だとわかった。




『……試さないならその後、どうする……?』

(そうだな、洞窟を出てみるか! 太陽にやられないといいけどな……)


 ゼロの心配は、この身体は太陽の下でも行動出来るのかだ。

 試さないとわからないので、とりあえず洞窟の奥から洞窟の出口に向かう。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 ん? 何か複数の気配がする……?


 出口に向かう途中、何かの気配を感じて足を止めた。

 今までは敵を察知しても、おかしいと思わなかったが、今回は複数の気配がしたから足を止めたのだ。

 複数で行動する魔物はいなかったが、今は四つの反応が固まって行動している。


(珍しいな……、近付いて確かめるか?)

『……この気配、今までのゴーストとスケルトンの動きと違う』


 レイは今回はゴーストとスケルトンの気配とは違うと言う。

 ゼロも強さがゴーストとスケルトンより強いと気付いる。

 戦う分には、問題ないと思うけど、見てみないとわからない。


 ゼロは足音に気をつけて、相手がいる場所に近付く。

 そして、向こうから声が聞こえてきた…………






「親分、どうですか!?」

「ほぉ、なかなかいいじゃねぇか!」

「ここなら隠れ家にちょうどいいですね!」

「ははっ! さっき奴隷馬車から奴隷を盗めたし、ちょうどいい隠れ家も見付かるなんて、運がいいな!」

「「ハハハッ!!」」






 アレか? 姿も想像していたのと変わらないし……




(なぁ、まさかのアレだよな……?)

『……うん、アレだよね』


 そう、二人が思ったことは一致していた。

 向こうで高笑いしている親分と呼ばれている人間と子分臭いの人間が二人。




(やっぱり、盗賊だな……)

『……姿も盗賊。バンダナも巻いているし』


 定番と言えるような盗賊の姿だった。




(もう一人は話からでは、奴隷のようだな?)

『……どうする……?』

(……よし、人間相手にどれだけ戦えるか試すか!)


 ゼロは人助けでもなく、自分の力はどれだけ通用するかの確認のためだけに…………






 グサッ……




「がっ!な、なな……」

「親分!?」

「何者だ!?」


 ゼロは親分の盗賊を後ろから魔素の剣で心臓を刺していた。

 ゼロは人を殺すには、躊躇はなかった。

 何故、殺す躊躇が無かったのは…………




(殆どの人間は敵なんだよねっ!)

『……グッド、大将は死んだ』


 二人共、前の世界から殆どの人間は敵だと認識していた。

 殺すことは、心の中では問題無かったが、前の世界では法律があった。

 だから、憎くて殺したとしても、刑務所に入られては九重と奈々はお互いと一緒にいられなくなってしまう。

 それには耐えられない。

 二人は一緒にいるために、嫌なことがあっても仕返しもせずに、泣き寝入りするしかなかった…………




 だが! 今回は前の世界とは違う。

 今、自分は魔物になっているため、法律には縛られないし、二人が別れることはない。

 ゼロとレイはお互いがいれば、人間が全滅しようが、心は痛まない。

 だから、今は…………




「てめぇ! よくも、親分をやりがったな!?」


 子分がこっちに向かってきた。

 死んだ親分を蹴り飛ばして、子分の人間の邪魔となった。

 その間に、切り掛かってきた子分とは別の子分を殺した。




「がっ!?」


 ゼロは剣をまた心臓を刺し、捻って斬った。

 それで終わらず、最後の子分も死体が邪魔で上手く動けない所に首を飛ばした。




『……お兄ぃの、勝ち……!』

(思ったより弱かったな?)

『……うん、スキルも無かったし』


 どうやら、この盗賊は人間の中ではザコのようだ。


(あ、奴隷が残っていたっけ?)

『……そうだった。どうする……?』


 ゼロは奴隷がいる場所を見た。

 その奴隷は、ポカーンと口を開けてこっちを見ている。

 ゼロはすぐに殺さずに、声を掛けていた。

 初めに、鑑定したら気になったことがあったから声をかけることにしたのだ。




「おい、言葉はわかるか?」

「っ!? ご、ゴーストが……喋った!?」

「お、言葉はわかるみたいだな」




(しかし、この世界の言葉は日本語なのか?)

『……違う。『知識者』のおかげ』

(……? つまり、『知識者』が自動で、日本語を相手にわかる言葉に変えて話しているということか? さらに相手の言葉もわかるように処理してくれているってわけか?)

『……そう、それの認識で合っているよ。便利だね』

(便利すぎだ! 『知識者』はすげぇな……)


 短い時間でレイと会話している時に、向こうから声を掛けてきた。




「あ、あの……、貴方はゴーストですよね?」

「うん、それで間違っていない。で、お前は奴隷だよな?」

「は、はい。名前はありませんが……」

「それはいい。聞かせてくれないかな?」

「はい?」


 その子には、長い耳とふわふわな尻尾があった。見た目で狐の獣人で女の子だとわかるが…………






「魔物って、奴隷に出来るの?」






 その言葉で狐の獣人に見える女の子の目が大きく開かれていた。






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