第1話 転生と把握





 ……? ここは……?



 意識が少し覚醒していくと、声が聞こえる。いや、頭の中で声が流れているような感じだった。






『……お兄ぃ?』




 っ!?


 声がハッキリと聞こえ、意識は完璧に覚醒する。

 何故なら、一緒に死んだはずの妹である奈々の声が聞こえていたからだ。


「ま、まさか……。奈々なのか?」

『……うん、奈々だよ。それより、身体を見てみて……?』


 身体を見てと聞こえて、その声に従って身体を見ると…………




「な、な…………、なんだこりゃーーーーー!?」




 身体が小さくなっていて、透けていたのだ。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆






『……落ち着いた?』

(あぁ……、大丈夫だ。しかし、ここは何処だ? この身体は何だ?

 しかも、奈々がいないのに、何故か頭の中に声が流れてくるし……)


 わからないことだらけだった。そこに、奈々から答えをくれる。


『……どうやら、お兄ぃは、転生したみたい』

(何故、そうだと?)

『……その身体、ゴーストみたい』

(ゴースト? 確かに、透けているしな)


 何回も身体を見てみるが、どう見ても人間と言うより、ゴーストにしか見えない。


『……それに、私は自我があるスキルに、なっている』

(スキル?)

『……うん、自分に『鑑定』を使ってみて。念じるだけでいい』


 その話を聞いて、ゲームみたいだなと感じた。奈々のいうとおりに、自分に『鑑定』を念じて使ってみた。そうしたら、自分のステータスが見えた。






ステータス

 名称 ???

 種族 幼霊体(ゴースト)変異種

 称号 なし

 スキル

    希少スキル『知識者(チシキモノ)』(名称 ???)

         (鑑定・統合・思考空間)


    特殊固有スキル『魂吸者(スイトルモノ)』

         (吸収・回復促進)


    通常スキル『熱寒耐性』


    通常スキル『無痛感』




 というモノだった。


(やはり、ゲームみたいだな……。ん、『知識者』が奈々ってことか?)

『……うん、名称は???になっているけど』


 他に、能力もあったので、さらに『鑑定』を使ってみたら、詳しいことがわかった。

 『知識者』にある鑑定は今、使っているからわかるとして、統合は手に入れたいくつかのスキルを合わせ、新しいスキルを作れるようだ。

 思考空間は、奈々と話す時、思考を加速させて百倍のスピードで会話出来る。つまり、空間を張っている間は、周りの人には知覚出来ないようになっているのだ。

 うまく使えば、戦闘の時にも役に立つだろう。


(なるほど……、どれもいいものだな)

『……それだけじゃない。私の知識も使える……』

(俺も前の記憶があるし、奈々もそうだろうな。これからも頼りにしているぞ)

『……うん、任せて』


 奈々は天才だ。今までも奈々の知識や天才な所に助けられた。

 ここは二人が知らない場所なのだ。これから生きていくには、奈々が持つ力が必須なのである。


(さて、『魂吸者』も使えるな)

『……私の統合と相性がいい』


 そう、『魂吸者』の吸収は、体力、魔力、スキルを吸収することが出来、スキルだけは吸収出来る確率は低いが、吸収出来たら『知識者』の持つ統合で強いスキルを手に入る可能性が高いのだ。


『……吸収したら回復が早くなるみたい』

(お、それは嬉しいな)


 これで攻撃方法と回復方法があるのと同じだ。


 次に確認しなければならないことは、ここが何処なのか。

 自分は鑑定で魔物だとわかっている。自分がいる場所はおそらく、洞窟の中だと予測する。


(ゴーストみたいなのはお墓か洞窟が定番なんだが、ここは洞窟のようだな?)

『……周りを見ても洞窟、だとしか思えない』

(そうだよな。なら、その後はどうするか決めないとな)

『……目的を?』

(ああ、クソッタレな世界の時は生きる目的がわからなかったが、ステータスやスキルがあるファンタジーな世界なら生きる目的ややりたいことが沢山ありそうだろ?)

『……確かに、この世界は面白そう』


 奈々もそう同意する。この世界は前の世界と違って、ゲームのように面白そうなのだ。


(そうだろ。一緒にやった一人用のRPGを思い出すな……)

『……勇者からのスタートではなく、魔物からだけどね』

(それはそれさ! で、一つ気になったんだが、ステータスにある名称のとこ、何故、俺らの名前じゃないんだ?)


 ステータスに出ている名称が???になっている。前の名前は引き継がれなかったのかと思う。


『……多分、あの世界とこの世界とは違うし、新しく付けないとダメじゃない……?』

(ふむ、ゲームや小説ではネームドモンスターとかあったが、それかな?)

『……小説の時、誰かに付けてもらっていたはず』

(あー、自分で自分の名前を付けるとかなかったな。なら! お互いに新しい名前を付けてみようぜ!)

『……私と?』


 妹である奈々といえ、スキルに名前をつけられるなんてそうそうはあるはずはない。


『……私はスキルになっているけど……?』

(問題はないと思うぞ? スキルの隣に名称があったんだから、お前に名前をつけられるだろう。さらに、スキルといえ、自我があって話せるんだからな!)

『…………』




 奈々は言われたことを考え込んでいる。しばらくして、愛するお兄ぃがそう言っているんだから、問題はないと結論を出す。


『……了解だよ。もう考えたの……?』

(ああ! 新しい人生になるし、始まりとも言える名前に決めた!)

『……始まり……、わかった。私もお兄ぃに付ける名前を決めた』


 お互いはもう名前を決めたようだ。一緒に合わせ、言う。




「お前の名は……」

『お兄ぃの名は……』









「『レイ(ゼロ)!!』」









 この世界での名前が決まった。兄はゼロ、妹はレイと名付けられた。

 どちらも始まりになる【零】に当て嵌まる名前となった。

 お互い、名前を付け終わると、レイの声とは違う声がまた頭に流れてくる。



《確認いたしました。『零』はネームドモンスターになりました》




 初めて聞くレイは驚いていた。ゼロの方はどこかで聞いたような……?という感じだった。


『……お兄ぃ? この声は……?』

(…………あ! 思い出した! どこかで聞いたような声だなと思ったが、死ぬ前に聞いた声と同じだわ)

『……死ぬ前?』

(ああ、それはな……)


 レイに飛び降り自殺して死ぬ前に聞いた声のことを説明した。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




『……そうだったんだ』

(あの時、俺が願ったから起きたことかもな)

『……うん、私はお兄ぃとまた一緒で嬉しい』

(俺も嬉しいぞ!!)


 二人はまた一緒に人生を謳歌出来ることを喜ぶ。


『……目的はどうする? 私はお兄ぃのやりたいことについていくだけ』

(我が愛する妹は、前と変わらないな)

『……お兄ぃがいなかったら、すぐにいなくなっていた』


 もし、お兄ぃに会わなかったら10歳までは生きていなかったと断言するレイ。


(……わかった。俺が何をしようが、一緒にいてくれるか?)

『……私もお兄ぃと同じ目的になると、断言出来る』

(そうか、今、俺は魔物だろ?)

『……うん』


 レイにはゼロの言いたいこと、目的はもうわかっているようだ。その目的はレイも願っていることでもあるのだから、否定する理由もない。

 前の世界では、力が足りなくて出来なかったこと。それは…………









「俺達は、この世界を征服する。そのために、魔王になろう」









 この瞬間、世界が荒れる種が生まれるのであった…………






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